助成研究成果報告書Vol33
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3.実験結果および考察 3・1 ナノ周期構造の表面形状制御 2・2 細胞試験 ナノ周期構造を形成したTi基板上において,ヒト骨芽細胞(MG-63)を37℃,5%CO2濃度のインキュベーター内で3時間培養した.その後,細胞をTi基板上で組織固定し,免疫染色を行うことで細胞のアクチンを赤色,核を青色となるように染色し,細胞伸展の様子を蛍光顕微鏡で観察できるようにした.そして蛍光顕微鏡観察画像から,溝の方向に対する伸展角度および細胞数を計測することで,細胞配向性を評価した.ここで,細胞伸展角度θcellは,図図3に示すように,溝の方向に対して垂直な方向に対する角度として定義し,細胞伸展角度θcellが90°の場合,溝の方向に沿った細胞伸展を示し,細胞の伸展方向が定義できないランダムな方向に進展している細胞はθcell=Randomとした. 図図4にレーザフルエンスおよび照射回数を一定とし,パルス幅tpを0.2 psから5.0 psへと変化させて,超短パルスレーザ光を照射した場合におけるTi基板表面のプローブ顕微鏡観察画像および表面プロファイルを示す.図より超短パルスレーザ光を照射することで,レーザの偏光Eに対して垂直な方向に溝を有するナノ周期構造がTi基板上に形成されていることがわかる.表面プロファイルよりパルス幅の増加にともない,形成されるナノ周期構造の周期は減少し,深さは増加している.すなわち,パルス幅の長い場合は凸部と凹部の高低差が比較的大きな構造が得られ,パルス幅の短い場合は凸部と凹部の高低差が比較的小さな構造が得られている.表面プロファイルよりアスペクト比αを算出すると,図中に示すようにパルス幅の増加にともない,アスペクト比が増加することが明らかになった.パルス幅が5.0 psの場合,0.2 psと比較して約1.6倍のアスペクト比が得られている.本結果は,パルス幅によってレーザ強度が変化することに起因していると考えられる.実験ではレーザフルエンスを統一してパルス幅を変化させているので,パルス幅0.2 psのレーザ強度は5.0 psのパルス幅と比較して25倍レーザ強度が高い.超短パルスレーザ光は凸部において電界集中が生じることが知られ細胞伸展に与える影響について実験的に調べた.最後に.Tiの初期表面形状がナノ周期構造の表面形状に及ぼす影響について調べた. 2.実験方法 2・1 ナノ周期構造形成 ナノ周期構造形成のための実験試料として,8×8×0.5 mmの純Ti基板を用いた.Ti表面には電解研磨を施し,その表面粗さをRa=0.01 μm,Rz=0.06 μmとした.図図2に,ナノ周期構造形成のための超短パルスレーザ光照射セットアップ概略図を示す.中心波長λ=790 nmおよび繰り返し周波数Rp=1.0 kHzの超短パルスレーザ光を用いた.ビームスポット内で均一な形状を有するナノ周期構造を形成するため,矩形の穴(1.5 mm×1.5 mm)を有する厚さ0.08 mmのマスクを用い,Ti基板表面で図2(c)のようなトップハット型のビームプロファイルが得られるようにした.この際,マスクとレンズ間の距離L1=2790 mmおよびマスクから試料間の距離L2=159 mmとし,ビームスポットサイズ約82×82 µmを得た.図2(b)のようにXYZステージを用いて集光ビームスポットをTi基板表面で走査し,走査速度をVs=5.47 mm/sとすることでビームスポットあたりの照射回数がN=15 shotsで一定となるようにした. はじめに,レーザフルエンスを一定としパルス幅tpを0.2 psから5.0 psへと変化させ,ナノ周期構造の表面形状(周期Dpおよび深さHp)の変化を調べた.レーザ照射前後の表面形状はプローブ顕微鏡で測定し,アスペクト比α= Hp/Dpを算出した.次に,パルス幅を一定とし,レーザフルエンスがナノ周期構造の連続性に与える影響を調べた.不連続点は走査型電子顕微鏡(SEM)観察像から計測した.ここで,細胞の接着斑のサイズより100 nm以上断続している箇所を不連続点として定義し,溝長さ1 µmあたりの不連続点の数を算出することで連続性を評価した. 図2 超短パルスレーザ光照射方法 図3 細胞伸展角度の定義 − 434 −

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