助成研究成果報告書Vol33
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キーワード:レーザ積層造形,β型チタン合金,生体材料,結晶配向化, 低ヤング率 図1 三次元積層造形機の概略図. 金属粉末を用いた積層造形法は近年急速な注目を集めており、CoCr合金、Ti合金、Ni合金、TiAl金属間化合物などについての研究が盛んに行われている。積層造形法は所望の形状の3次元CADデータを作製し、そのデータを造形方向に対して垂直にスライスし、高さに応じた2次元データに加工する。このデータをもとにして、基板に原料粉末を散布し、そこへレーザーや電子ビームを照射することで溶融凝固させて形状を得るプロセスである(図1)。このプロセスは難加工材料でも形状を付与させることや、これまで不可能であった複雑な形状の造形体作製を可能とする。しかし、本積層造形法の特徴は複雑形状の製造だけにとどまらない。局所的溶融、熱流方向により内部組織を制御可能であり、このことを利用して材料組織などの材質パラメータの制御をも可能にすることが積層造形法の大きな特徴である。例えば、航空宇宙材料であるTiAl金属間化合物の造形体では、造形条件を巧みに制御することで溶融池付近を局所的に熱処理することやこれに伴う力学特性の向上も報告されている1)。積層造形法を用いた製造法は少量多品種、高機能が求められる分野をターゲットとして展開されようとしている。これは各顧客のニーズに合わせた形状と材質を付与できる積層造形法の利点を最大限に活かせるためであり、具体的な例としては、上述したような航空宇宙材料であるタービンブレードや生体用インプラントが挙げられる。生体材料は個々で求められる形状は異なり、生体材料では個体や埋入部に合わせて最適な形状を素早く生産することが求められている。さらに、生体用インプラント、例えば、骨折部固定用ボーンプレートでは、応力遮蔽(埋入インプラントと生体骨とのヤング率ギャップがもたらす骨量および骨質の劣化)回避の観点から低ヤング率化が求められる2)。積層造形プロセスでは、複雑形状を有するカスタマイズされた少量多品種のインプラントを迅速に製造可能であり、その結晶配向、方位を制御することで、低ヤング率化も可能である。このことについては筆者らが継続的に研究しており、簡潔に述べると、β型チタン合金単結晶体における1原子あたりの価電子数を減少させ、かつ非熱的ωを抑制することで、<001>方位のヤング率が生体骨程度まで大きく減少するというものである。従って、βチタン造形体を作製し、さらに集合組織を形成させ、荷重軸方位に<001>方位が向くように設計(平成29年度 一般研究開発助成 AF-2017238) することで、低ヤング率を示す生体インプラントが開発できると考えられる3-7)。すなわち、構造と材質を同時に制御することを可能とする積層造形法は他の製造プロセスとは一線を画した製造プロセスであり、社会的要求、関心も非常に高い分野であるといえる。 積層造形法はその前段階として所望の合金粉末(Pre-alloyed powder)を準備しなればならない。しかしながら、チタン合金の粉末作製は技術的困難さや、このことに伴うコスト上昇のため、積層造形技術発展の足かせとなっているのが現状である。そこで筆者らは構造及び材質制御に加え、純金属の混合粉末を用いて合金化が達成できたならば、合金系、形状、さらに材質も自由に設計することが可能となると考察した。しかしながら、積層造形法と混合粉末を使用した合金化についての系統的な調査はなされていない。そこで本研究では、生体用金属材料として有用なTi合金に着目し、異種金属混合粉末とレーザ積層造形法を用いてTi合金造形体作製を試み、合金化に際し、大きく影響を与えると考えられる融点、平衡分配係数、投入エネルギー密度、冷却速度などの熱力学的諸量との関係を解明することとした。 1.研究の目的と背景 准教授 當代 光陽 − 429 −レーザ積層造形法による純金属混合粉末からの 合金造形体作製と集合組織形成 新居浜工業高等専門学校 環境材料工学科

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