図1(a)一般的なアンカー接合, (b)相互浸透層を介したアンカー接合PvEd1.研究の目的と背景キーワード:アンカー接合,付加製造,燃焼合成近年,地球温暖化対策のために温室効果ガスの一つであるCO2排出量の削減が求められている.そのために,輸送機器の分野ではガソリン車の燃費改善や走行時にCO2を排出しない電気自動車の利用が進められている.ガソリン車の燃費改善や電気自動車の航続可能距離向上のためには,車体の軽量化が有効である.そこで,高張力鋼板,アルミニウム合金,炭素繊維強化プラスチック(CFRP)などの複数の材料を適材適所に組み合わせる「マルチマテリアル構造」が注目されている1).マルチマテリアル構造を実現するためには,金属同士の接合だけでなく,化学的,物理的性質の大きく異なる金属と樹脂の接合技術を確立する必要がある.金属と樹脂の接合技術は接着剤,ボルトやリベットを用いた機械的締結,アンカー接合などが挙げられる2-5).これらの接合技術はそれぞれが長所と短所を持っており,一概にどの方法が優れていると述べることはできない.それぞれの技術がもつ短所を解消し,その適用範囲を広げていくことが重要である.本研究では,アンカー接合の欠点の一つである接合強度を改善することをターゲットとした.アンカー接合はレーザ照射6),化学エッチング7),サンドブラスト8)などの処理を行うことで金属表面に微細な凹凸を付与し,そこに樹脂を浸透させて機械的に接合する方法である(図1(a)).化学的な結合を必要としないため,任意の金属・樹脂の組み合わせに対応できる.また,締結部材を必要としないため,マルチマテリアル化による軽量化効果も大きい.しかしながら,接合強度に課題がある.特に,接合界面に垂直方向の引張強度(剥離強度)が低いという問題点がある.剥離強度を向上させるには,引張方向に対して平行でない接合部(undercut)が重要であるという報告がある9).しかしながら,通常のアンカー接合のように,金属表面から材料を除去する方法では,そうした構造を作ることは困難である.そこで本研究では,図1(b)に示すように,金属表面にポーラス構造を付加製造するプロセス10)を適用した.この付加製造したポーラス構造は金属表面から隆起しているため,隆起アンカー層と呼称する.具体的には,アルミニウム基板表面にAl-Ti-Cの混合粉末を敷設し,レーザを照射することで炭化チタン(TiC)をその場合成し,このTiCを骨格とする粒状生成物からなる隆起アンカー層を作製する10).名古屋大学大学院工学研究科物質プロセス工学専攻(平成29年度奨励研究助成A(若手研究者)AF-2017236)助教鈴木飛鳥2.実験方法本研究では,レーザの条件(出力,走査速度)を変化させて隆起アンカー層の構造の制御を試みた.さらに種々の隆起アンカー構造を介して樹脂と接合し,その接合強度を評価した.2・1隆起アンカー層の作製方法と評価方法Al(粒径:<45μm,純度:99.99%),Ti(粒径:<45 μm,純度:99.9%),C(粒径:<5 nm,純度:98%)の粉末をモル比が1:1:1になるように秤量・混合した.図2に本研究で行った隆起アンカー層の作製方法の模式図を示す.Al-Ti-Cの混合粉末をアルミニウム合金(A5052)基板(50×20×1 mm3)上に敷設した.このとき,敷設領域はレーザを走査する方向に10 mm,レーザ走査方向と直行する方向に5mmで,敷設厚さは50 μmとした.敷設した粉末に波長970 nmのパルス式半導体レーザを照射することで,隆起アンカー層を作製した.パルス持続時間,パルス周波数はそれぞれ0.7ms,1kHzであり,レーザスポット径は約1.2 mmである.レーザの出力と走査速度をそれぞれ200~400 W,10~100 mm/sの範囲で変化させた.具体的なレーザ条件を図3に示す.図中のプロットで示したレーザ条件を適用した.また,レーザ条件を整理する指標として以下の式(1)で示す面積エネルギー密度(Ed)を用いた.=(1)− 419 −レーザプロセスと燃焼合成プロセスを活用した隆起アンカー層の構造制御と金属/樹脂接合体の高強度化
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