助成研究成果報告書Vol33
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図6 レーザパルス間隔とパルス積重数変化図5にパルス間隔とパルス積重数を変えてレーザ照射したGaAs基板表面のSEM像を示す.1パルス照射では,ビーム形状に沿った円状の照射痕が確認できるが,LIPSSの形成は見られなかった.パルス間隔の広い0.42sでは,2パルス照射で表面に粒状のナノ構造を形成した後,4パルス以上においてそのナノ構造を基に約900nm周期のLIPSSを形成し始めた.これに対し,パルス間隔の狭い10µsでは2パルス以上で周期性の高いLIPSSを形成した.約900nm周期のLSFLを形成した後さらにパルス積重数を増すと,HSFLに変化した. 図5 レーザパルス間隔とパルス積重数を変えて の形成は確認できなかった2.5nsのパルス幅で照射した領域は,サイズの異なる10nm~1µmの結晶粒子の集合体である多結晶状態であった.パルス幅が広くなるほど,結晶状態が結晶質から多結晶状態になっていることが分かる.psオーダー以上のパルス幅において,結晶の配列乱れが発生し多結晶化し始めた結果は,格子振動を誘起し始めるとされる数psと同程度であることから,このパルス幅周辺が熱的・非熱的な現象の境界になると考える16-18).LIPSS形成におけるレーザのパルス幅の影響は,その形成可能性や周期のみならず,結晶状態に大きな違いを発生させることが分かった.LIPSS応用の用途に依り,その所望の結晶状態を制御可能である. 3・2 レーザパルス間隔の影響 レーザパルスの積重によりLIPSSを形成すること,またパルス積重を増すとLIPSSの周期が変化することを示した.その機構をより深く理解するため,被照射基板の同一箇所に照射されるレーザのパルス間隔とパルス積重数の影響を調べた.ここでは,被照射基板としてGaAs基板を使用し,パルス幅450fsのレーザを用いて照射した結果を示す.最初のレーザパルスが照射されてから次のレーザパルスが照射されるまでの時間であるパルス間隔は,0.42s及び10µsで(2.4Hz及び100kHzに相当),レーザエネルギーフルエンスは約1J/cm2である. それぞれのLIPSSの周期を図6にまとめた.積重数を増すとLSFLの周期は約900nmから約500nmに小さくなった.HSFLを形成し始める60パルス以上では,積重数とともにHSFLの占める領域が大きくなり,5000パルス以上では,照射領域に形成されるLIPSSは全てHSFLになった.また,図1で示したSiCへの結果と同様,LSFLは積重数とともに周期が小さくなるのに対し,HSFLの周期は積重数の増加で大きな変化は無いものの,その周期は100~250nm程度とばらつきがあった.パルス間隔の違いにより,LIPSSを形成し始めるパルス積重数に違いが見られたが,その周期変化の傾向に大きな違いは見られなかった.パルス間隔の違いは,パルス積重数の小さいLIPSS形成の初期段階において,被照射材料の励起状態に影響を与える結果と言える. 3・3 被照射材料種の影響 ワーと材料との相互作用の直接的な比較は困難であるが,ここではそれぞれの材料に対して安定してLIPSSを形成する照射条件で形成したLIPSSで比較した. モルファス状態の層が覆っていることが分かる.アモルファス層の厚さは約200nmであったが,照射するレーザパワーを大きくすると,このアモルファス層が厚くなった.この結晶状態は,Siが一度溶融して再結晶化したと考える. LIPSSの周期に被照射材料依存があることはこれまでにも報告されてきたが19),ここでは特にLIPSSの結晶状態の違いに着目して調べた.表1に示した6H-SiC,GaN,Sapphire,Si,GaAs結晶基板に,パルス幅450fsのレーザを用いてレーザ照射した結果を示す.パルス積重数はいずれも約3000パルスである.被照射材料に依ってLIPSSを形成するレーザパワーの閾値が異なるため,レーザパSiC基板に形成したLIPSSは,3・1で示した通り約200nmの周期で結晶質であった.高分解TEM観察により,基板から原子配列乱れのない高結晶性であることを確認した.次に,図7にSi基板に形成したLIPSSのSEM像とTEM像を示す.このLIPSSの周期は約650nmで,SiCと比べ大きかった.図7(b),(c)で示した断面TEM像より,LIPSSの各構造の中心部は数10nmサイズの結晶粒子の集合体である多結晶状態で,その多結晶領域をアレーザ照射したGaAs基板の表面SEM像 によるLIPSS周期の変化(GaAs) − 416 −

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