キーワード:レーザプロセッシング,フェムト秒レーザ,半導体結晶材料 表1 各基板の材料物性値7-11) 1.研究の目的と背景 高強度で安定な超短パルスレーザの実現により,材料への熱的ダメージの抑制,非線形光学効果の発現を活かしたレーザプロセッシングが可能になった.フェムト秒レーザを結晶表面に多積重照射することで,レーザの波長より短い周期の構造(Laser-Induced Periodic Surface Structure: LIPSS)が形成されることが知られている.従来の微細加工手法と比べ,マスクやレジストプロセスなどが不要でレーザ照射のみで形成されるシンプルなプロセス,波長の制限を超えた微細化が可能であることなどから,新たな微細加工手法として期待できる.新手法として確立するためには,形成過程の理解,構造の評価,構造の形成制御が重要である.LIPSS形成には,表面プラズモンポラリトンの励起1-3)や光パラメトリック崩壊過程4),第2次高調波発生5,6)などの寄与が示されている.構造の評価については,周期など形状の評価はなされているが,結晶状態の評価に関する報告はまだ少ない. 本研究は,フェムト秒レーザ照射による材料への効果をダイナミクスとして定量的に調べ,フェムト秒レーザの特徴を活かしたプロセッシングの実現と新たな可能性を探ることを目的とする.LIPSSの形状や結晶状態を決定付けるレーザパラメータや被照射材料の物性を明らかにすることで,自在制御に繋げる. 2.実験方法 2・1 レーザ照射 レーザパルス幅の影響を調べるため,同程度の波長でパルス幅の異なるレーザ発振器,IMRA America社のFCPA µ jewel D-10K(波長λ=1045 nm,パルス幅Tp=450 fs,繰り返し周波数f=100-1000 kHz),トルンプ株式会社のTruMicro 5070FE(λ=1030 nm,Tp=0.9 ps,f=100 kHz)及びTruMicro 5050FE(λ=1030 nm,Tp<10 ps,f=100 kHz),分子科学研究所・理化学研究所の平等拓範教授研究室のジャイアントパルス幅可変マイクロレーザ(λ=1064 nm,Tp=0.5-9 ns,f=100 Hz)を用いて照射実験を行った.いずれのレーザ発振器も直線偏光で,被照射基板表面にレーザ光をレンズで集光し照射した.また,同一箇所へのレーザパルス積重数とそのパルスの間隔を変え,LIPSSの構造変化の過程を調べた. レーザ照射前後に,アセトン,フッ酸,超純水,IPAの名古屋工業大学 工学研究科 (平成29年度 奨励研究助成A(若手研究者)AF-2017235) 助教 宮川 鈴衣奈 LIPSS形成に関する報告は主に,フェムト秒オーダーのパルス幅のレーザによるものであったが,ピコ~ナノ秒幅のパルスレーザでもLIPSSの形成を確認した.その形状や結晶状態を調べた.被照射材料として6H-SiC基板を用いた.レーザパルス幅を縦軸,レーザパルス積重数を横軸にした表面SEM像を図1に示す.ここでは,LIPSSの周期がレーザ波長より僅かに小さいものをLow-spatial-frequency LIPSS (LSFL),波長の半分以下のものをHigh-spatial-frequency LIPSS (HSFL)と呼ぶ.表面SEM像より,単パルス照射ではLIPSSは形成せず,多積重パルスによってLIPSSを形成したことが分かる.これまでの報告から,LIPSSの形成方向はレーザ偏光に依存しており,ここで示すSiC上のLIPSSは図中にEで示したレーザの偏光方向に対して垂直方向に形成していることが分順で基板洗浄を行った.被照射材料として,パワーデバイスや光デバイス応用に有用なSiC,GaN,Si,GaAs,Sapphireを用いた.それぞれの材料物性を表1に示す. 2・2 LIPSSの構造評価 LIPSSの形状と結晶状態は,走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscopy: SEM)と透過型電子顕微鏡(Transmission Electron Microscopy: TEM)で評価した.TEM観察サンプルは,集束イオンビーム(Focused Ion Beam :FIB)で薄片化してから観察した. 3.結果と考察 3・1 レーザパルス幅の影響 − 414 −結晶材料へのフェムト秒レーザ照射における ミクロな状態変化のダイナミクス理解
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