助成研究成果報告書Vol33
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香川大学 工学部 材料創造工学科(現在 創造工学部 創造工学科) 1.研究の目的と背景 (平成29年度 奨励研究助成A(若手研究者)AF-2017039) 講師 松田 伸也 などの加工条件が加工品位に及ぼす影響は明らかにされてきた.その中でクリアランスに注目すると,小さいクリアランスは高い加工品位を与えることが明らかにされている1).その一方で,金属加工においても高い加工品位を得るためにはクリアランスを小さくすることが有効である2).そのため,パンチをダイに嵌合させて分離する制約をはずし,精密加工のためにファインブランキング加工にマイナスのクリアランスを併用したパンチプレス加工2,3)が行われている.そこで,一方向CFRPから成形した異方性が顕著なCFRP積層板に対して,マイナスクリアランスによるパンチプレス加工を試みた.その結果,マイナスクリアランスでも,パンチプレスによって一度で打抜くことが可能であることがわかった.さらにバリが除去されており,高い品位であった.しかしながら穿孔内部の加工品位や加工プロセスは明らかにできていない. 本研究では,実験を通して系統的にマイナスクリアランスでの加工品位や加工プロセスを解明することを目的とした.はじめに,プラスからマイナスまでクリアランスを可変してパンチ穿孔加工を実施し,加工品位を評価した.次にパンチ加工中を観察して実験的に加工プロセスを調査した. 2.実験方法 汎用グレードのプリプレグ(T700SC(炭素繊維)/#2592(エポキシ樹脂),繊維体積含有率Vf = 0.6,東レ製)を直交積層([0°/90°]s)して真空中で加熱・加圧成形した.その後,ダイヤモンドカッターを用いて正方形のワーク(50mm×50mm)へ切り出して試験片とした.このとき厚さtは1.1mmである. 図1にパンチ加工治具とクリアランスの模式図を示す.図1(a)に示すように,ワークをボタンダイ(穴直径D =10.1mm,9.9mm,SKD11材)とカバープレート(パンチ通し穴直径=10.5mm)ではさみ,ボルトで固定した.ワークを固定した治具を変位制御式万能試験機(容量100kN)に固定し,室温下で試験機のクロスヘッドに固定したパンチを下方に変位させることで穿孔を加工した.パンチは,直径d=10mm,刃先角ゼロの平刃(SKD11材)を用いた.このときクリアランスC = (D-d)/2=0.05mmおよび-0.05mm(図1(b),(c))であり,クロスヘッキーワード:せん断変形,層間はく離,クリアランス 1・1 社会的背景と課題 炭素繊維強化プラスチック複合材料(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)は,高比強度,高比剛性のような優れた特性を有する.そのため,燃費向上を目的とした軽量化・高効率のために自動車のボンネット,ルーフなど薄板部材のような大量生産部品への適用が拡大している.構造部材を生産するためには,製造工程において穴あけやトリミングのような除去加工(2次加工)が要求される.現在ではドリル加工やレーザー加工,ウォータージェット加工が主流である.ドリル加工はポピュラーな加工法であるが,丸い穴開けに限定される.またダイヤモンドツールなど特殊で高価な工具を用い,かつ摩耗によるドリル交換やメンテナンスを行いながら低速で加工しなければならない.レーザー加工は,様々な異種形状への穴加工もできるが,加工部位が多いと工具などの移動や入れ替えのために時間のロスが生じる.ウォータージェット加工では高品位が得られるが,加工速度が遅く加工できる形状に制限がある.製品を量産化する上では高速かつ精密加工が要求されるため,これらの加工はいずれも加工コストや設備費,タクトタイムの観点から量産化には不向きである.そのためCFRP製品の量産化・低コスト化を促進するためには短期間で安価な除去加工技術を確立する必要がある. 課題を解決するために,せん断を利用した機械加工がどのような異方性を有するCFRPに対しても適用できれば,CFRPに特化した設備を必要とせず,金属材料と同様に金型などの変更のみによって加工できるため,大幅なタクトタイムの短縮やコスト削減が期待できる.複雑な変形・損傷・破壊プロセスを示す異方性CFRPに対して適した刃(パンチ刃)やクリアランス,ワーク温度などの加工条件を最適化する必要がある.一方で,一方向プリプレグからなる熱硬化性CFRP積層板は低層間じん性であるとともに顕著な異方性を示すため,加工の難易度は最も高い.加工難易度の高い材料に対して成功すれば,それ以外の材料に対しても高品位が得られる. 1・2 目的 これまでCFRP積層板に対するパンチプレス穿孔加工が行われ,刃(パンチ刃)やクリアランス,ワーク温度− 404 −CFRP積層板のパンチプレス加工に及ぼす マイナスクリアランス効果の解明

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