■■■■■■■■■■1ステップで追加される亀裂は直線であることを仮定する.破壊領域に所属し,かつ,表面に位置する節点の中で 図2内の■をせん断帯内部と外部の速度差の空間勾配とするとき,せん断帯内部の速度勾配■■■は外部の速度勾配■■を用いて, ■1■ キーワード:せん断加工,有限要素法,分岐理論,延性破壊 表面 図1 亀裂線追加法の概要 1.緒言 2.亀裂線追加法による破断表現 2・1亀裂線追加法の概要 自動車用高張力鋼板のせん断加工においては,伸びフランジ性や疲労強度,遅れ破壊耐性の向上が課題である.これらの特性はせん断切り口の加工硬化や残留応力,凹凸に強く影響を受ける1)~3).有限要素法(FEM)によるせん断加工シミュレーションによってこれらを予測することができれば適切な工具と工程の設計ができるが,現状ではいくつかの課題が存在する. まず,破断面性状をシミュレーション上で再現するには,広く使われるような要素剛性低減(あるいは要素削除)による破壊の表現を改良する必要がある4).また,せん断加工が行われるような薄鋼板では板材引張試験により機械的特性を取得するが,この試験ではシミュレーションに必要となる延性破壊の条件を取得することが難しい5). 本研究ではこれら2つの課題の解決を図るべく,要素剛性低減に代わる亀裂線追加法の検討,および小丸棒引張試験による破断ひずみと応力3軸度の測定を行った. 本報告書では亀裂線追加法の検討として,亀裂線の方向決定にIto-Goyaの弾塑性接線剛性行列と組み合わせた分岐理論を用いる場合の構成則の導出とシミュレーションの結果を示す.また,小丸棒引張試験の検討として,破断ひずみまでの大変形域応力・ひずみ線図の計測とFEMによる応力3軸度の導出の結果を示す.応力3軸度については放射光により実測した結果と比較し,その妥当性を検証した. 本手法においては,図1に示すような破壊判定された要素の集合を一つの破壊領域とし,一つの破壊領域ごとに一つの亀裂線を導入する.この場合の各要素の破壊判定は何らかの延性破壊モデルを用いて行う. 損傷値(所属する要素の値を平均して算出)が最も高いものを亀裂線の始点と定める.亀裂線の方向は破壊領域に属する要素全体の応力の平均値より算出する.亀裂線と破壊領域境界の交点を亀裂線の終点とする. 亀裂線の始点は外形線上にあるので,始点に2重節点を配せば亀裂表面が新たな外形線として追加されることになる.これらをリメッシュのステップごとに繰り返す事でせん断加工における亀裂発生や伝播を表現する.節点分離法に類似すると思われるかもしれないが,この亀裂線追加法においては亀裂終点を他の節点と独立に定める.既存の節点分離法とは明確に異なる手法である事を強調したい. なお,今回の解析ではリメッシングプログラムの都合上から表面節点が破壊領域に存在する場合においてのみ亀裂線を発生させた.すなわち,内部破壊は無いものとした.また,始点と方向によっては亀裂線が破壊領域内に存在しない場合も起こりうるが,このような場合においては新たな亀裂線は生成しないと仮定した. 破断条件をみたした要素集合 破断の評価値が最も高い節点 2・2分岐理論 亀裂進展方向を決定づける上で必要な,分岐理論の定式を示す.ここではStoren&Rice6)によって提案された分岐界面の速度差に関する定式を用いる.以下,図2の分岐界面(せん断帯)のモデルを使い,その理論について紹介する. 鳥取大学学術研究院 工学系部門 (平成29年度 奨励研究助成A(若手研究者)AF-2017038) 准教授 松野 崇 亀裂線を追加した新たな表面 亀裂線.破断要素集合の平均応力よりその方向を求める − 398 −せん断加工シミュレーションにおける破断表現の 改善と破断条件測定手法の確立
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