助成研究成果報告書Vol33
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キーワード:エバネッセント波,微細機能構造,マイクロ光造形 2・2 エバネッセント波干渉による構造造形例 2つの屈折率の異なる媒質間で,高屈折率側から低屈折率側に入射した光は,一部は低屈折率側に透過し,残りは境界面で反射する.光の入射角が2つの媒質の屈折率に依存するある臨界角以上になると,透過光は無くなり,全て 図2.定在エバネッセント波造形のAFM像5) mmnn009922Cured resinCured resin530nm530nmGlass substrateGlass substrate1.研究の目的と背景 ここで,境界面と直交する軸をz軸,境界面と光線面の交わる軸をx軸ととる.A,ω,tはそれぞれ電場の振幅,角振動数,時間を表す.波長はλ,波数はkで表されている.n1,n2はそれぞれ高屈折率側と低屈折率側の屈折率を示している.θは入射角である. エバネッセント光の染み出す低屈折率側を光硬化性樹脂で満たすことにより,厚さ数百ナノメートルの薄膜を造形することが可能である.この際境界面において,複数の光束を干渉させながら入射することで,特定の強度分布が生じ,それに応じた硬化形状を持つ造形物が得られる.図2は2光束干渉エバネッセント波による造形例5)である.2光束の干渉では定在波が生じ,波状の造形物が得られる.光束数を増やすことにより,高さの異なる凹凸構造を有する複雑構造の造形が可能となる.構造の自由度は向上する一方で,入射条件の場合の数は膨大になり,条件に対する構造の推定はより困難になる. 表面の物理的寄与が相対的に大きくなる昆虫等小生物の表面は,極めて優れた機能界面となっていることが知られている1-3).撥水,防曇,防滴,防塵などの自浄作用のある力学的機能の他,例えば,視覚器官表面(複眼表面,単眼表面など)においては,視覚利用波長帯全域に亘り,広い角度入射光波を器官に取り込むことができるなど,極限まで追求された光学機能が付与されており,このような機能構造表面の人工的プロセス法の確立が求められている.これらの微細構造はサブ波長以下のサイズ単位を有するため,一般的な自由空間伝搬光を媒体としたレーザ加工法では構造創製能力の微細性限界のため,創製困難な問題があった. そのため,エバネッセント光特有の局在界面フォトンエネルギー場を精密制御し,ナノ加工エネルギーとして活用するエバネッセント露光型マイクロ光造形法において,複数光束のエバネッセント波干渉4)により生じる界面近傍微細強度分布を利用することで,従来手法では困難であった面内一括加工によるサブ波長微細構造からなる光学機能素子形状の創製を目指す.特に本申請研究においては,多光束エバネッセント波で生成可能な複雑な微細構造分布を可視化可能な数値シミュレータを構築するとともに,簡単なフィルタ交換だけで全方位多光束エバネッセント波干渉を実現可能な一括制御型マイクロ光造形装置の開発を目指した. 2.研究方法,結果 2・1 エバネッセント波 の光が反射する全反射が起こる.この際,境界面には電場振幅が存在するため,低屈折率媒質側に電磁気的エネルギーの染み出しが生じている.この染み出したエネルギーがエバネッセント光である(図1).この光は境界面からの距離に対し指数関数的に減衰し,およそ波長程度の領域に局在する.エバネッセント光の境界面での電場E,マクスウェル方程式とスネルの法則を用いて次のように記述される. 東京大学 先端科学技術研究センター (平成29年度 一般研究開発助成 AF-2017234) 教授 高橋 哲 図1.エバネッセント光 (1) − 393 −全方位多光束エバネッセント波一括制御型 マイクロ光造形装置の開発 ■■■exp■i■■■■■■■■i■■■■sin■■ ■■■■■■■2■■■■■■■■■■■sin■■■1■

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