図11 Fe:ZnSeレーザの出力特性 図12 Fe:ZnSeレーザの出力スペクトル 晶の方が励起光の吸収率が高まるため、出力が高まったと考えられる。発振閾値はいずれの場合も約40 mWであった。透過率34%の出力ミラーと高濃度結晶を用いた場合に最も高い出力とスロープ効率が得られ、値はそれぞれ2.13 Wと59%であった。焦電型ビームプロファイラ(Ophir, Pyrocam III)で測定した出力のビームプロファイルを図11の挿入図に示す。 スペクトル測定は、波長分解能1 nmのモノクロメーターを用いて行った。測定されたスペクトルを図12に示す。スペクトルは多数のピークをもち、複数の縦モードが同時に発振していることを示している。200 mWから1.2 Wへの出力増加に伴い、中心波長が4149 nmから4198 nmへと長波長側へ移動しており、これは励起に伴い結晶温度が上昇したことに起因していると考えられる。温度の上昇に伴い、吸収スペクトルは主に長波長側に広がり、発光スペクトルは短波長側に広がる10)。吸収スペクトルと発光スペクトルが重なり合うことで、短波長域で再吸収が起こり、その結果、出力スペクトル長波長側へ移動したと考えられる。この現象のFe濃度に対する依存性を調べるため、二つの結晶の出力スペクトルを比較した。図12に示すように、低濃度結晶は高濃度結晶に比べて短波長に広いスペク1) S. D. Jackson, Nat. Photonics 6, 423 (2012). 2) T. Li, K. Beil, C. Kränkel, and G. Huber, Opt. Lett. 37, 2568 (2012). 3) U. Hiyori, S. Tokita, K. Junji, M. Masanao, S. Seiji, Y. Ryo, Optics Express 26, 3497 (2018). 4) H. Uehara, S. Tokita, J. Kawanaka, D. Konishi, M. Murakami and R. Yasuhara, Appl. Phys. Express 12, 022002 (2019). 5) J. J. Adams, C. Bibeau, R. H. Page, D. M. Krol, L. H. Furu, and S. A. Payne, Opt. Lett. 24, 1720 (1999). 6) V. Fedorov, D. Martyshkin, Karki, Krishna, and S. Mirov, in Laser Congress 2018 (ASSL), OSA Technical Digest (Optical Society of America, 2018), paper AW3A.6. 7) E. Migal, A. Pushkin, B. Bravy, V. Gordienko, N. Minaev, A. Sirotkin, and F. Potemkin, Opt. Lett. 44, 2550 (2019). 8) D. V. Martyshkin, V. V. Fedorov, M. Mirov, I. Moskalev, S. Vasilyev and S. B. Mirov, 2015 Conference on Lasers and Electro-Optics (CLEO), San Jose, CA, 2015, pp. 1-2. 9) A. V. Pushkin, E. A. Migal, H. Uehara, K. Goya, S. Tokita, M. P. Frolov, Yu. V. Korostelin, V. I. Kozlovsky, Ya. K. Skasyrsky, and F. V. Potemkin, Opt. Lett. 43, 5941 (2018). 10) J. W. Evans, T. R. Harris, B. R. Reddy, K. L. Schepler, and P. A. Berry, J. Lumin. 188, 541 (2017). トルを示している。この結果は、Fe濃度が高くなるほど、発振波長が長波長へシフトすることを示しており、再吸収の影響を強く受けていることがわかる。 4.まとめ 透明材料加工のための高出力中赤外レーザの基礎研究として、Er:Lu2O3セラミックスを用いた高出力連続波レーザとQスイッチパルスレーザ、ならびにFe:ZnSe結晶を用いた高出力連続波レーザの開発を実施した。Er:Lu2O3 レーザおよびFe:ZnSeレーザーは2.8 μm帯および4 μm帯のコンパクトかつ高効率な高出力中赤外レーザー光源として有望であることが示された。特に、Fe:ZnSeレーザはおよそ4~5 μmの幅広い増幅帯域をもつため、波長可変レーザやフェムト秒超短パルスレーザとしての応用も期待される。 本研究は、公益財団法人天田財団の一般研究開発助成のご支援を受けて実施しました。ここに謝意を表します。また共同研究者である核融合科学研究所の上原日和氏、安原亮氏、三星ダイヤモンド工業の村上政直氏、モスクワ大学のA. Pushikin氏、F. Potemkin氏らに謝意を表します。 謝 辞 参考文献 − 388 −
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