図7 Er:Lu2O3レーザのパルス幅と繰り返し周波数 図8 レーザパルスの時間波形 図9 Fe:ZnSeレーザの概略図 図10 Er:ZBLANファイバレーザの概略図と出力特性 3・3 実験結果 平均出力1.3 Wであった。励起パワーの増加にしたがってパルス幅が短くなり、繰り返し周波数が増加した。パルスエネルギーは最大で9.4 μJ、ピーク出力33 Wであり、いずれも現在Er:Lu2O3で報告されている最大値である。 ていない。本研究では、世界で初めて、高出力・高安定・高ビーム品質な2.8 μm帯ファイバレーザを励起光源として用いることで、Fe:ZnSeレーザの高効率発振を実証した9)。 3・2 実験装置 Fe濃度が2.5×1018 cm−3および3.5×1018 cm−3の二つのFe:ZnSe結晶をレーザー増幅媒質として用い、比較実験を行った。これらの結晶は気相成長法により育成され、高い均一性と低損失を実現している。低濃度結晶の寸法は10 mm×10 mm×8.5 mmで、10 mm×10 mmの2面を光学研磨してある。高濃度結晶の寸法は8 mm×3 mm×8 mmで、3 mm×8 mmの2面が研磨面である。室温でのFe:ZnSe結晶の上準位寿命は370 nsと短いため、CW発振を行うには極めて高い励起強度が必要となる。そのため、室温でのCW発振は事実上困難である。本実験では、液体窒素クライオスタットを用いて結晶を77 Kまで冷却した。77 Kでの寿命は約60 μsである。温度上昇に伴う寿命の短縮は多フォノン緩和により生じる。 実験装置の概略図を図9に示す。レーザー共振器は真空容器内に構成した。ベローズを利用して出力ミラー(OC)を可動とすることで、共振器アライメントと共振器長の調整を可能にしている。励起光導入のためにCaF2窓板を使用した。レーザー共振器は平面ダイクロイックミラーと曲率半径50 mmの凹面ミラーで構成した。ダイクロイックミラーは励起波長(2800 nm)で高透過率(95%)、出力波長(3900~4900 nm)で高反射率(99.5%)をもつ。出力ミラーは透過率17%と34%の二種類を用意した。励起光源として半導体レーザー励起Er:ZBLANファイバレーザ(図10)を用い、最大出力6.5 Wの安定したシングル横モード光を得た。励起レーザーの発振波長は2.80 μmである。励起光は焦点距離125 mmのCaF2レンズによってFe:ZnFe結晶上で直径250 μm(1/e2幅)となるように集光した。 Fe:ZnSeレーザーの出力特性を図11に示す。励起光の吸収パワーは、光学系の損失と結晶の透過率の測定値から計算した。透過率17%の出力カプラーを用いた場合、低濃度結晶で1.49 W、高濃度結晶で1.84Wの出力が得られた。スロープ効率はいずれの場合も約50%であった。高濃度結3.Fe:ZnSeレーザ 3・1 概要 Fe:ZnSeレーザーは、1999年に米国のAdamsらが初めて発振に成功し5)、およそ4~5 μmの幅広い波長域で発振が得られる波長可変レーザーとして期待され、研究が続けられている。これまでに、3.6~5.2 μmの波長可変レーザー発振6)、フェムト秒パルス増幅7)、液体窒素温度における35 Wの高平均出力パルスレーザ発振8)などが実証されている。しかし、2.5~4 μmの中赤外域に励起帯を有するため、使いやすい励起光源がなく、幅広い実用化には至っ− 387 −
元のページ ../index.html#389