助成研究成果報告書Vol33
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図6に平均出力、図7にQスイッチパルス幅と繰り返し周波数を示す。CW動作において、現在Er:Lu2O3セラミックレーザで報告されている最高出力である2.6 W(11 W励起時)を得た。グラフェン挿入時、図8に示したパルス列が得られ、安定したQスイッチパルス動作を確認した。10.6 W励起時、パルス幅300 ns、繰り返し周波数140 kHz、 図5 Er:Lu2O3レーザの発振スペクトル 図3 Er:Lu2O3レーザの発振スペクトル 図6 Er:Lu2O3レーザの出力特性 図4 レーザ効率のEr濃度依存性 11at.%サンプルの発振スペクトルを示す。しきい値付近では波長2720 nm近傍で、励起パワー1.5 W以上では2845 nmで発振していることがわかった。Er3+添加濃度によって効率が変化した原因のひとつとして、Er3+イオン濃度の増加に伴い、レーザ下準位(4I13/2)イオン間での協同アップコンバージョンが促進し、下準位の寿命が短くなることが考えられる。濃度依存性について、より考察を深めるため、今後、寿命測定を行う予定である。また、各サンプルの透過スペクトル測定をおこなった結果、セラミックスの光学品質が発振性能に寄与している可能性が示唆された。 高ピーク出力化を図るため、グラフェンを可飽和吸収体として用いた受動Qスイッチングによるパルス発振を試みた。レーザ媒質として、11 at.% Er3+添加Lu2O3透光性セラミックスを用いた。2枚の平面ミラー(OC透過率5%)を組み合わせた共振器内に、20℃で水冷したEr:Lu2O3 と単原子層のグラフェンを挿入し、中心波長970 nm のLDで励起することで発振特性を評価した。 揺らぎが確認された約2 msまでの時間スケールにおいて、2715, 2725 nmの2波長帯で発振し、それ以降は2740, 2840 nmの2波長帯で発振しているのがわかる。このような発振波長が長波長シフトする現象は、これまでにもEr:Lu2O3結晶で報告されており、短波長側での再吸収が原因と考えられる。2 ms励起の場合、短波長側のみが発振するため、効率が低かったと推測される(図2)。これらの結果から、CW励起の場合、長波長側の2波長帯のみでの発振が推測される。本システムにおいて、すでに室温でのCW動作も確認しており、現段階ではスロープ効率17%を達成している。これは現在Er:Lu2O3セラミックレーザで報告されている最高効率である。 さらなる高効率・高出力化のため、Er3+添加濃度依存性について調査した。レーザ媒質として、Er3+添加Lu2O3透光性セラミックス(添加濃度:5, 10, 11, 15 at.%)を用いた。2枚の平面ミラーを組み合わせた共振器内に、20℃で水冷したEr:Lu2O3を導入し、中心波長970 mのLDで励起することでCW発振特性を評価した。図4に入出力特性を示す。15 at.%サンプルは効率が著しく低く、濃度消光が生じている可能性が考えられる。濃度5, 10, 15 at.%においてスロープ効率は20%以上であり、特に11 at.%サンプルでは最高効率29%を達成した。また、励起パワー10 Wにおける出力は2.3 Wであった。これは現在Er:Lu2O3セラミックレーザで報告されている最高効率・最高出力である。図5に− 386 −

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