4.結言 謝 辞 参考文献 を観測した結果であるといえる.一方,(e),(f)においては,全ての回折点がシフトとブロードニングが混在している状態となっている様子が分かる.加えて,シフトの方向が回折点により異なっている様子も観察できる.これらの結果から,16 J/pulseの照射条件における衝撃圧縮状態では,マクロには一軸ひずみ状態ではあっても,結晶格子レベルではもはや一軸ひずみを維持することができず,結晶子の回転や不均一変形により応力・ひずみ緩和が生じている,つまり降伏後の塑性ひずみが生じている状態の格子応答を観測した結果であると言える. 本実験により,衝撃圧縮下における降伏前後の状態における格子応答の様子を,X線回折により観測することに成功した.しかし,本測定は透過法であるがゆえに,回折画像は衝撃波伝播方向のひずみ分布状態が重畳したものとなっている.今後は,レーザー速度干渉計を用いた衝撃波プロファイル計測を実施することにより,衝撃波伝播方向におけるマクロなひずみ分布状態の情報を取得し,本回折画像と比較することにより,格子ひずみの衝撃波伝播方向における空間分布ならびに,その時間発展を明らかにしていきたいと考えている.また,塑性変形領域においては,各回折点のシフト方向の違いから,結晶の回転やすべりの方向を明らかにし,結晶方向と衝撃波伝播方向の関係も含めた,塑性変形のメカニズム解明に繋げていく予定である. 本研究では,ポンプ・プローブ型時間分解X線分光システムを活用し,パルスレーザー照射によるレーザーアブレーションにより材料内部に生じる格子レベルの変形過程を実時間で観測することを試みた.アルミニウムを対象に行った実験では,レーザー誘起衝撃波の伝播により結晶粒がμmサイズからnmサイズに微細化されていることが確認され,衝撃波面の背後で激増する転位密度の評価にも成功した.CaF2単結晶に対して行った実験では,放射光の特徴を利用した白色X線によるラウエ回折測定を行うことにより,衝撃波に対する結晶格子レベルでの弾性応答と塑性応答とを分離して実時間観察することに成功した.レーザー誘起の変形過程を実時間計測で評価することが可能である本実験手法は,レーザーピーニングに代表される様々なレーザー加工技術における変形機構・加工機構の解明に非常に有用であるといえる. 筑波大学の高木壮大氏,興野純氏,東京工業大学フロンティア材料研究所の中村一隆氏に協力を頂いた. KEK PF-AR NW14Aビームラインでの時間分解X線回折実験の実施にあたり,KEK物質構造科学研究所の一柳光平氏,足立伸一氏,野澤俊介氏,深谷亮氏,船守展正氏,[1] Y. Sano et al., Mater. Sci. Eng. A 417, 334 (2006). [2] O. Hatamleh et al., Int. J. Fatigue 29, 421 (2007). [3] L. A. Zependa-Ruitz et al., Nature 550, 492 (2017). [4] K. Ichiyanagi et al., Appl. Phys. Lett. 91, 231918 (2007). [5] T. Sekine et al., Phys. Chem. Minerals 38, 305 (2011). [6] K. Ichiyanagi et al., Sci. Rep. 9, 7604 (2019). [7] G. K. Williamson et al., Phil. Mag. 1, 34 (1956). [8] R. E. Smallman et al., Phil. Mag. 2, 669 (1957). [9] E. M. Bringa et al., Nat. Mater. 5, 805 (2006). [10] M. A. Meyers et al., Acta Mater. 51, 12111 (2001). 図3 CaF2[100]試料((a), (c), (e))およびCaF2[111]試料((b), (d), (f))で測定された2次元ラウエ回折像.(a), (b):レーザー照射前.(c), (d): 1J/pulseレーザー照射後4 ns.(e), (f): 16J/pulseレーザー照射後4 ns. − 384 −
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