助成研究成果報告書Vol33
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レーザー照射タイミングに対して様々な遅延時間で測定されたX線回折パターンに対し,各回折スポットにおける半値幅を計測しその分布の変化を調査した.その結果,レーザー照射タイミングからX線回折測定までの遅延時間が遅くなるにしたがい,つまり試料内をレーザー誘起衝 撃波が伝播していくにしたがい,半値幅が大きくなっていくつまり,回折ピークがブロード化していくことが明らかとなった.この回折ピークのブロード化はレーザー誘起衝撃波が試料全体を伝播するまで継続する.この回折スポットの半値幅分布を基に,レーザー誘起衝撃波伝播により変化する平均結晶子サイズおよび不均一格子ひずみの導出を行った.平均結晶子サイズおよび不均一格子ひずみの導出にはWilliamson-Hall法[7]を用いた.Williamson-Hallプロットを行うに際して,測定された4つの回折面(111), (200), (220), (311)すべての値を用いた.今回は,衝撃波によるピークブロードニングが最大となった状態での評価を行い,衝撃波が試料全体を通過したタイミング(本実験ではレーザー照射後9 ns)で取得されたX線回折像に対して解析を行った.解析の結果,結晶子サイズ��33 nm,不均一格子ひずみ��0.21�10��と求められた.この結果から,衝撃波面背後の応力場により,μmサイズの結晶粒がnm0.286 nmである.Williamson-Hall法により求められた結晶サイズにまで微細化されていることが示唆される.衝撃荷重下におけるアルミニウムの転位密度�は,塑性変形による微細ひずみと結晶粒サイズと関係付けられ,以下の式で求められる[7, 8]. ここで,�はバーガースベクトルで,アルミニウムでは子サイズ�と不均一格子ひずみ�の値をそれぞれ用いると,転位密度��0.77�10�� m��となる.見積もられた転位密度は,衝撃荷重下におけるFCC金属の分子動力学シミュレーション[9]により求められた値より2~4桁低い値となっている.その一方,転位の運動を考慮したMeyersによる転位密度モデル[10]とは良い一致を示す.これまで行われてきた,衝撃実験後に回収された試験片に対する事後測定による解析では,Meyersモデルよりも更に低い転位密度であった.このことは,これまでに行われてきた衝撃回収実験では,試料の回収過程において衝撃波により導入された転位の消滅が生じてしまい,衝撃誘起の塑性変形機構を正しく評価できていない可能性を示唆している.つまり,衝撃波により材料に生じる塑性変形の機構評価において,実時間測定が非常に重要であることが明らかになったと言える.本研究で実施された,ポンプ・プローブ型時間分解X線回折法は,レーザー衝撃波誘起の塑性変形過程をin situで評価することができる非常に強力なツールである.今後は,今回1条件だけであったレーザー照射条件を変化させ,また結晶構造の異なる金属材料を用いるなどし,実験を継続していくことにより,多結晶金属材料のレーザー衝撃波誘起の塑性変形機構を明らかにしていきたいと考えている. 3・2 レーザー誘起衝撃波による単結晶CaF2単結晶の弾性応答および塑性応答 図3にCaF2単結晶に対して実施したレーザー衝撃圧縮下実時間X線回折実験において測定された,透過ラウエ回折像を示す.図中の(a),(b)はレーザー照射前の状態であり,(c),(d),(e),(f)はレーザー照射後4 nsの状態で取得された回折像である.また,(c),(d)におけるレーザー強度は1 J/pulseであり,(e),(f)では16 J/pulseである.CaF2[100],CaF2[111]いずれの試料においても,レーザー強度が1 J/pulseの条件においては,2θ方向(径方向)高角度側(外側)に新たな回折点が現れていることが分かる.本実験で行った白色X線によるラウエ回折では,結晶構造に異方的なひずみが生じた時に回折点が移動する.(c),(d)に見られるように全ての回折点が一様に高角度側にシフトしている状態は,結晶構造が一軸方向に縮んでいることに相当する.このことから,この衝撃圧縮条件では,結晶格子というミクロの状態でも一軸ひずみ状態が達成されており,応力・ひずみ緩和の生じていない弾性変形領域の格子応答 図2 純アルミニウム試料の2次元透過X線回折像 (a)レーザー照射前,(b) 1J/pulseレーザー照射後30 ns (a) (b) − 383 −��2√3���

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