2.めっきを施した炭化物を利用した肉盛 2・1 実験方法 工条件)が適正でなければ割れが発生する可能性がある.そこで,本研究では最適な加工条件についての基礎的な実験を行うとともに,熱応力シミュレーションによって最適な加工条件を決定する技術についても検討を行った. 肉盛に使用した炭化物は炭化タングステン(以下,WC,粒径約70 m)で,その表面にめっきを施した.めっきの種類は融点が比較的高いニッケルボロンめっき(Ni-B,厚さ約2 m)とした.マトリクスにはコバルト基合金ステライト6(粒径53 m ~ 150m)を用い,基材には厚さ10 mm,大きさ100 mm × 100 mmの鋼板(材質S50C)を用いた. レーザには,レーザライン社製の半導体レーザ(LDM 2000-60)を用いた.レーザの最大出力は2 kW,スポット形状は5 mm × 5 mmである.レーザ肉盛ヘッドにはフラウンホーファ製のCOAX-12を用いた.粉末の供給にはGTV社製の粉末供給装置を用い,キャリアガスにはアルゴンガスを用いた.また,肉盛中は肉盛ヘッドのノズルからシールドガスとしてアルゴンガスを20 L/min.供給した. 2・2 めっきの効果の確認 レーザパワーの設定値1.2 kW,ヘッドの送り速度10 mm/s,粉末供給量ステライト6:約6.5 g/min.,WC:約5.0 g/min.の条件で3層肉盛した試料(肉盛長さは70 mm,肉盛高さ約1 mm)のカラーチェック後の表面写真を図1に示す.図では,割れが存在した箇所を矢印で示している.(a)はめっきを施していない炭化物を使用した結果,(b)はめっきを施した炭化物を使用した結果である.めっきを施すことにより,割れの数を約半分に低減させることができている. 肉盛層組織のSEM写真を図2に示す.(a)はめっきを施していない炭化物を使用した結果,(b)はめっきを施した炭化物を使用した結果である.(a)の組織は,白い粒状のものと白いデンドライト状のもの,およびグレーのマトリクスで構成されている.(b)も同様の組織になっているが,デンドライト状のものは少ない. 図1 肉盛層表面写真 (a) めっきを施していない炭化物使用,(b)めっきを施した炭化物使用 エネルギー分散型X線分析装置(EDX)を用いて成分を調べた結果,白い粒状のものからはタングステン(以下,W)と炭素(以下,C)が検出され,デンドライトからはWが多く検出された.この結果から,粒状のものは未溶解のWCであり,デンドライトは肉盛時にWC粉末の一部がマトリクス中に溶出し,凝固時に再び炭化物として晶出したものと考えることができる.(b)の場合は,めっきにより炭化物の溶出が抑えられたことにより,デンドライト状の晶出物が少なくなったと考えられる.また,めっき層は見られず,溶けてしまったものと考えられる. それぞれのマトリクスの成分をEDXで分析した結果を表1に示す.めっきありの場合は,めっきなしと比べ,Wの値が10 %程度小さくなっており,めっきによりWCの溶出が抑えられたことがわかる.ただ,ステライト6のW含有量約5 wt%と比べると,Wの量は増えていることから,WCの溶出を完全に抑えることはできていない. (a) めっきを施していない炭化物使用,(b) めっきを施した炭化物使用 表1 マトリクス成分のEDX分析結果(wt%) めっき なし めっき あり (a) (b) 図2 肉盛層組織のSEM写真 W Cr Fe Co 38.4 17.4 5.9 35.7 - 28.8 16.8 6.5 35.1 10.6 50 m 50 m Ni その他 2.6 2.2 − 358 −
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