図8 工具逃げ面の損傷 4.まとめ 謝 辞 参考文献 一方切削速度120 m/minでは,ドライ,水道水ミスト,不水溶性切削油剤ミストの場合に,大きく欠損した.高浸透水ミストの場合は,欠損は無く,逃げ面摩耗も水溶性切削油剤と同程度であった. ③切削液の効果の考察 はじめに,切削速度40 m/minについて考察する.この切削速度は,工具メーカの推奨条件である.ドライで工具に大きな欠損が生じたことから,インコネル625合金肉盛材のドライ切削は困難であることがわかった.工具刃先に凝着物がみられることから,摩耗形態は,熱的摩耗(拡散摩耗)と凝着摩耗のいずれの可能性も考えられる.これらの摩耗を抑制するには,切削液による冷却と潤滑が必要である.水溶性切削油剤のウェット加工において切削抵抗が低く工具の損傷が抑えられたのは冷却と潤滑の効果の発現と考えられる. 一方,ミスト切削でも,一定の加工が可能であることが明らかになった.すなわち水道水ミストと高浸透水ミストでは,凝着が生じるものの,刃先の欠けはほとんど認められず,切削抵抗も水溶性切削油剤によるウェット加工には及ばないものの加工距離に伴う大きな上昇は見られなかった.水は潤滑作用がほとんどないことから凝着を抑制できないが,冷却作用により拡散摩耗を抑制されたと推察される.不水溶性切削油剤によるミスト切削では凝着はほとんど生じないが,小さな欠けが多数発生した.この理由は,不水溶性切削油剤の潤滑作用により凝着は抑制されたが,冷却不足により拡散摩耗が進行したと考えられる. 以上から,インコネル625合金肉盛材の切削には,刃先の欠損を防止するために,切削液による冷却作用が支配因子であることが明らかになった. 次に,切削速度120 m/minにおける切削特性を考察する.図8に見られるように,切削速度120 m/minでは,ドライ,水道水ミスト,不水溶性切削油剤ミストのいずれにおいても工具に大きな欠損が生じた.切削速度120 m/minでは40 m/minに対し,刃先温度が上昇し,ドライはもとより,冷却能力が高くない不水溶性切削油剤ミストも冷却が不十分であったと考えられる.冷却能力の高い水でも工具の欠損を防止することができなったのは,水の浸透性が影響したと考えられる.水は浸透性に劣り,狭い隙間に入りにくい.40 m/minの場合は,切削速度が高くないため浸透性の低い水でもある程度刃先付近に浸入することができたが,120 m/minの高速条件では水は刃先へ到達できず,冷却が不十分であったと考えられる.高浸透水ミストの場合,刃先への浸透,冷却により工具の損傷なく1,800 mmの加工が可能であったと考えられる. 以上から,切削速度120 m/minの高速条件においては,切削液の冷却作用と,刃先に到達させる浸透性の必要性が明らかになった. 3)肉盛材に対して,切削速度40 m/minでのドライ切削ではエンドミルに欠損が生じ,安定した切削は困難であっ4)切削速度120 m/minにおいては,浸透性を高めた高浸透水を用いることにより,ミスト供給でもウェット並み1)金安力:溶射技術, 34,(2014),69. 2)Steffen Nowotny et.al:J. Therm. Spray Tech., 16,(2007),344. 3)牧野吉延ら:溶接技術,60,(2012),63. 4)日本溶接協会特殊材料溶接研究委員会編:スーパーアロ5)草開清志ら:鉄と鋼,85,(1999),241.インコネル625合金粉末を用いレーザ粉体肉盛溶接の肉盛層の金属組織と硬さ並びに切削特性について調べた.得られた結果を以下に記す. 1)所定の条件を選定することにより,割れやポロシティ等の欠陥を発生させることなく肉盛層の形成が可能であった.また硬さは,熱影響部で僅かな上昇が見られた. 2)肉盛材と溶製材の被削性を比較したところ,切削距離が増えるにつれ,切削抵抗は溶製材のほうが高くなった.肉盛材の切削距離に対する切削抵抗の上昇率は小さく,比較的問題なく切削をおこなうことができた. た.一方,水道水または不水溶性切削油剤をミスト供給すれば切削抵抗が低い状態で加工することができた.特に水道水ミストで刃先の欠けが生じていなかったことから,切削液の冷却作用が欠け防止に有効であることがわかった. に工具損傷がほとんどなく切削をおこなうことが可能であった. 本研究は,公益財団法人天田財団の平成29年度一般研究開発助成(AF-2017225)によるものである.ここに謝意を表す.また切削試験は,当所主任研究員の横田知宏が実施した.併せて謝意を表す. イの溶接,(2010),69,産報出版. − 356 −
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