助成研究成果報告書Vol33
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図3 肉盛材と溶製材の切削抵抗の比較 図4に1,800 mm加工後の工具逃げ面の状態を示す.いずれにおいても大きな損傷は認められない.刃先の凝着図4 工具逃げ面の状態 図2 肉盛層の金属組織と硬さ分布 図3に両者の切削抵抗の加工距離に対する変化を示す.加工初期の切削抵抗値は,溶製材のほうが低いが,加工距とし,送り量,切込み量は一定とした. 切削液とその供給方法は次の通りとした.水溶性切削油剤としてエマルション(20倍希釈)を選定し,約7.5 ℓ/minで2本のノズルから切削点に供給した.また比較として,水道水,浸透性を高めた水道水(高浸透水),不水溶性切削油剤を,0.5 MPaの圧縮空気とともにミスト供給する方法(供給量約1 mℓ/min)も実施した.さらに,切削液を供給しないドライでも実験をおこなった. 切削後のエンドミルの刃先をマイクロスコープ(キーエンス製VHX-600)により観察した. こなった.その結果をまとめて図2に示す. 図の下側に示す金属組織写真において,楕円を少し傾けた形の明るく見える領域が周期的に観察される.この明るく見える領域は,溶融凝固境界を表している.肉盛パスの形成は左から右側に向けて順番に行っているため,この明るい領域より左側が後続の肉盛パスを堆積した際に昇温されたために生じた熱影響部である.また写真の左側の一部でデンドライト組織が見られ,溶融凝固境界を貫いて,エピタキシャルに成長していることが確認できる. 肉盛層全体を観察すると,割れや大きなポロシティは観察されず,健全な肉盛層が形成されている. 図2の上部には,最表面に形成した肉盛層の硬さ分布を示す.金属組織中に明示した線は硬さ測定位置を示している.この線上を0.2 mmピッチで硬さ測定をおこなった.硬さは240~300HVの範囲にあり,板材をTIG溶接により突合溶接をおこなったものと同じ硬さの範囲にある4).3.実験結果 3・1 肉盛層の金属組織と硬さ また溶融凝固境界の左側では硬さは数十HV上昇している.インコネル625合金は620~800 ℃の昇温により時効硬化することが明らかにされており5),後続パスの形成時の昇温により,時効硬化が生じたと推察される. 3・2 切削試験 ①肉盛材と溶製材の比較 肉盛材と溶製材の切削特性について調査した.切削条件は,切削速度:40 m/min,送り:0.03 mm/tooth,径方向切込み:0.5 mm,軸方向切込み:3.0 mm,切削液:水溶性切削油剤,加工距離:1,800 mmとした. 離とともに増加した.一方肉盛材では,加工初期の抵抗値は大きいが,加工の進展に伴い一旦減少しそこからは溶製材に比べ緩やかな増加になり最終的には溶製材の約85%の抵抗値であった. 状態を比較すると,溶製材のほうがやや凝着が多く認められる.これにより溶製材の切削抵抗が大きくなったと考えられる. 本実験では,切削速度を中心として工具メーカの推奨切削条件を採用し,水溶性切削油剤を供給しながら切削試験をおこなった.この条件を用いれば,大きな問題もなくインコネル625合金による肉盛層の切削が可能であることを確認できた. SUS304上に肉盛層を形成し肉盛方向に直角に切断し,その面の光学顕微鏡による金属組織観察と硬さ測定をお− 354 −

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