表1 粉末組成 (mass%) 図1 粉末の外観SEM像 2・2 切削加工 上記肉盛材を20 mm×60 mm×4 mmのブロック状にエンドミルで加工し,被削材として切削実験に供した.また,比較のためにインコネル625合金の溶製材を用意し,同様の形状に加工し切削試験をおこなった. キーワード:粉体レーザ肉盛溶接,切削加工,インコネル合金 粉体レーザ肉盛溶接は,入熱域を抑えることができるため,薄い対象物に肉盛ができる.例えば,工業用カッターの刃先への硬化層形成1),航空機や火力発電用ガスタービンのタービンブレード等のエンジン部品補修2)3)等に利用されている. 航空機のエンジン部品は,稼働中は1,000℃前後の高温環境下にあるため,高温酸化により損耗する.損耗した部品は,整備時に交換・廃棄される.しかしながら,材料費は高価なため,補修・再利用への要望は強い.航空機産業が盛んなヨーロッパでは,粉体レーザ肉盛溶接装置・LMDによる補修の研究開発が行われ,様々なエンジン部品への適用が試みられている.この粉体レーザ肉盛溶接は,エンジン部品の補修における重要な基盤技術となるものと考えられる.しかしながら,レーザ肉盛層の表面状態は平滑では無いため,部品として供するには成形が必要となる.複雑な形状のものが多いため,マシニングセンタにおける切削加工技術の開発が必要となる. 航空機エンジン部品の代表的な材料であるインコネル合金は,高温強度が高い,加工硬化が生じやすい,工具材料との親和性が大きい,熱伝導率が小さいといった要因のため,難削材であることが知られている.航空機産業の成長を見越し,近年,インコネル合金を対象とした切削に関する研究報告が増えている.しかし旋削加工が主体で薄肉のエンジン部品の加工で行われるミーリング加工の実用的な切削データは十分に存在していない.工具材種や切削工具の切れ刃形状の選択,切削条件の設定などに関して,指針となる基礎データは不足している.さらにインコネル625合金は固溶強化型,718合金は析出強化型合金であり,レーザ肉盛時の後続パスにより先行パス中の固溶体や析出物が熱影響を受けることが想定される.熱影響により硬さを始めとする材料特性が場所により異なり,被削性は場所により相違すると推定される.このような不均質材料に対する被削性に関する研究報告はなされていない. このような背景から本研究では,インコネル625合金を対象とし,その肉盛層の被削性を明らかにすることを目的とする. 神奈川県立産業技術総合研究所 情報・生産技術部 (平成29年度 一般研究開発助成 AF-2017225) 部長 薩田 寿隆 2.実験方法 2・1 レーザ粉体肉盛溶接 レーザはディスクレーザ(トルンプ製 Trudisk3306)を用いた.レーザ照射条件は,出力1.6 kW,ビーム径φ4.3 mm,走査速度0.01 m/sとした.粉末はインコネル625合金を用い,供給量は16 g/minとした.粉末成分を表1に,外観写真を図1に示す.粒径は-44/+125 μmである.基材はSUS304で,サイズは,100 mm×50 mm×10 mmである.レーザ光の吸収率を上げるために,アルミナ製メディアを基材表面に投射し,表面に凹凸を形成した.これらの条件で,幅約30 mm,長さ約70 mm,高さ約5 mmの積層造形をおこなった. マシニングセンタ(牧野フライス製作所製V33)のテーブルに3成分切削動力計(キスラー製9257B)を設置し,その上に上述の被削材を固定した. 直径6 mmの4枚刃スクエアエンドミル(三菱マテリアル製VQ-MHV 6)を用いて被削材の側面切削をおこなった.切削速度を40 m/minおよび120 m/minの2条件Si Mn C Fe Mo Nb Ni 0.01 0.45 0.39 21.79 0.4 9.26 3.57 Bal. Cr 1.はじめに − 353 −粉体レーザ肉盛溶接と切削加工を組み合わせた耐熱合金の 高精度造形技術の研究
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