図7 平均粒子径の比較 試料濃度は(左)1 mM,(右)10 mM 青は10分反応,赤は20分反応. 謝 辞 参考文献 が分かる.そこで,粒径が15 nm以上の粒子の割合をPLと新たに定義して比較した結果を図8に示す.薄いフェロセンヘキサン溶液(1.0 mM)を用いた場合,攪拌によってPLは約40%から約15%まで減少した.しかし,濃いフェロセンヘキサン溶液(10 mM)でのPLは約60%と大きく,また攪拌によって減少させることは出来なかった.つまり,原料濃度が高い場合には粒子の融合,すなわち粒径の増大を防ぐことができないことを示している.一方,混合溶液を用いた場合のPLは原料濃度にかかわらず5%未満であり,粒子の融合がほぼ起こらないことを示している. 図8 粒径が15 nm以上の粒子の割合試料濃度は(左)1 mM,(右)10 mM 青は10分反応,赤は20分反応. 光学顕微鏡を用いて混合溶液を観察したところ,マイクロメートルサイズのヘキサン液滴が水中に生じることが分かった.つまり,鉄ナノ粒子の原料であるフェロセンはヘキサンのみに溶解するため,原料はマイクロメートルサイズのヘキサン液滴に閉じ込められていることになる.レーザ照射によって液滴中の一部の原料のみが鉄ナノ粒子になると考えられるが,生じた粒子が融合して大きくなるには再度液滴がレーザに晒される必要がある.しかし,レーザが照射されている体積はごく小さく,攪拌されているために液滴が常時レーザに晒されているわけではない.そのため,ヘキサン液滴内で生じた粒子同士が融合する確率は小さくなる.さらに,粒子が水層に移動すると,粒子が融合によって大きくなる確率は激減する.その結果,混合溶液を用いることで粒子の成長が抑制でき,粒径が10 nm以下に保たれたと考えられる.さらに,粒径分布も狭いため粒径を揃えるための遠心分離操作などの後処置も不要である. 水層のTEM像には炭素凝集体はほとんどみられなかったが,ヘキサン中にはわずかな炭素凝集体が観察された.つまり,混合溶液を攪拌しながらレーザを照射することで,脱離した配位子ならびにわずかに生じた炭素凝集体をヘキサン層に分離できると考えられる.いずれにせよ,混合溶液を用いることで課題であった炭素凝集体の除去も可能になった. 4.結論 本研究は有機金属錯体溶液のレーザプロセッシングによって炭素を含まない酸化鉄ナノ粒子や純鉄ナノ粒子を生成できること,最適な錯体の種類や溶媒,あるいは互いに混合しない溶液を用いる事で粒径の制御が可能であることを示した. 今回の成果は,今後のさまざまなナノ粒子生成法の開発,特に添加剤を用いることのないナノ粒子の粒径制御の実現のための設計・開発に大きく寄与すると考えられる.温熱療法に最適な酸化鉄粒子のサイズは条件にもよるが12 nm程度と見積もられている.本手法を用い,さらにレーザの照射条件を最適化することで望みの粒径の粒子を選択的に得られると期待できる. 本研究(成果は参考文献7,8,9に発表)は公益財団法人天田財団 一般研究開発助成(レーザプロセッシング)のご支援を受けて行われました.関係者を代表いたしまして心より感謝申し上げます. 1) D. Zhang, B. Gökce, S. Barcikowski, Chem. Rev. 117 (2017) 3990−4103. 2) T. Yatsuhashi, N. Uchida, K. Nishikawa, Chem. Lett. 41 (2012) 722−724. 3) T. Hamaguchi, T. Okamoto, K. Mitamura, K. Matsukawa, T. Yatsuhashi, Bull. Chem. Soc. Jpn. 88 (2015) 251−261. 4) T. Okamoto, E. Miyasaka, K. Mitamura, K. Matsukawa, T. Yatsuhashi, J. Photochem. Photobiol. A 344 (2017) 178−183. 5) T. Okamoto, K. Mitamura, T. Hamaguchi, K. Matsukawa, T. Yatsuhashi, ChemPhysChem 18 (2017) 1007–1011. 6) V. Amendola, P. Riello, M. Meneghetti, J. Phys. Chem. 115 (2011) 5140–5146. 7) T. Okamoto, T. Nakamura, R. Kihara, T. Asahi, K. Sakota, T. Yatsuhashi, ChemPhysChem 19 (2018) 2480−2485. 8) T. Okamoto, T. Nakamura, O. Y. Tahara, M. Miyata, K. Sakota, T. Yatsuhashi, Chem. Lett. 49 (2020) 75−78. 9) Y. Horikawa, T. Okamoto, T. Nakamura, O. Y. Tahara, M. Miyata, S. Ikeda, K. Sakota, T. Yatsuhashi, Chem. Phys. Lett. 750 (2020) 137504. − 352 −
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