ここで,平均粒子径の増減だけでなく,大きな粒子の割を防いで粒子径の増大を抑えると考えられる.つまり,有機金属錯体は鉄源になるだけでなく,配位子が粒子を保護し,粒径の増大を抑えるキャッピング剤としても有効に働くことが分かった. 図5 FeAcから作製した粒子のTEM像と粒径分布 (a) ヘキサン溶液,(b)水溶液 3・3 原料濃度や反応時間に粒径が依存しない酸化鉄ナノ粒子の作製9) 本研究では有機金属錯体溶液のレーザプロセッシングにおいて,互いに混合しない有機溶媒と水の混合溶液を用いることで原料濃度や反応時間によらずシングルナノメートルサイズの酸化鉄ナノ粒子の作製に成功した.成果はChemical Physics Letters誌に発表し(参考文献9,謝辞明記),2020年4月22日に大阪市立大学からプレスリリース「原料濃度や反応時間によらず大きさが一定の酸化鉄ナノ粒子の簡便な合成法の開発に成功」を行った(謝辞明記).また,2020年5月1日発行の化學工業日報6面に記事「粒径均一な鉄ナノ粒子 大阪市立大が簡便合成」が掲載された. 粒子の生成量を増やすためには原料濃度を高くすることと,反応時間を長くすることが必要である.しかし,単一の溶媒を用いる限り粒子の融合を防ぐことは困難である.そこで,水には溶解せず,ヘキサンのみに溶解するFeCpを原料に用い,互いに交じり合わない水とヘキサンを攪拌して不均一にした状態にレーザを照射した.比較のため異なる実験条件(条件1:攪拌なしヘキサン溶液,条件2:攪拌ありヘキサン溶液,条件3:ヘキサンと水の混合溶液)において原料濃度(1 mMと10 mM)と反応時間(5~20分)が酸化鉄ナノ粒子の粒径に与える影響を調べた.異なる日に複数回実験することで再現性を担保した. TEM像を元に作成した粒径分布(10分照射)を図6に,平均粒子径(10分と20分照射)を図7に示す.薄いフェロセンヘキサン溶液(1.0 mM)を用いた場合,攪拌によって平均粒子径が31%減少したが,濃度を10倍濃くした場合(10 mM)は攪拌による平均粒子径の減少はほぼ見られなかった.一方,混合溶液を用いた場合は,ヘキサン層に粒子は見られず,全て水層に分散した状態であった.さらにフェロセン濃度ならびにレーザ照射時間にかかわらず平均粒子径は約7 nmであり,フェロセンのヘキサン溶液(攪拌なし)に比べて平均粒子径は64%減少した(10 mMの場合). 図6 10分照射後の粒径分布 試料濃度は(a)1 mM,(b)10 mM 合がどれだけ変わったかにも注目した.図6では粒径が15 nm以上の部分を濃い色で示している.原料濃度が低い場合(1.0 mM)は,攪拌によって大きな粒子の割合が減少したこと,混合溶液ではその割合がさらに減少したこと− 351 −
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