助成研究成果報告書Vol33
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3・2 配位子を利用するシングルナノメートルサイズ酸化鉄ナノ粒子の作製8) FeAcヘキサン溶液から生じた球状粒子(図5a,レーザ照射終了10分後に採取した試料)の平均粒子径は7.6±3.4 nmであった.FeAcを用いることでFeCpヘキサン溶液の場合と比べて平均粒子径は約1/4になった.生じた球状粒子は凝集体に覆われていたが,TEM-EDSにより球状粒子は酸化鉄,凝集体は炭素で構成されていることがわかった.過去にはFeCpを原料とし,ベンゼンなどの芳香族化合物を溶媒に用いた粒子作製の報告があるが,得られた鉄粒子は炭素を含むものであった.これは,レーザ照射によってFeCpのみならず溶媒も同時に分解し,鉄と炭素が混在した状態から炭化鉄ナノ粒子が形成されたためと考えられる.一方,ヘキサンのような脂肪族炭化水素系の溶媒を用いると溶媒由来の炭素は発生しない.そのため本研究で得られた酸化鉄ナノ粒子に炭素が含まれなかったと結論した.ただし,FeCpから脱離した配位子はレーザによって分解され,融合を経て炭素凝集体を形成する. 本研究では有機金属錯体溶液のレーザプロセッシングにおいて,用いる錯体の配位子や溶媒によって酸化鉄粒子の粒径と炭素凝集体生成の制御が可能であることを示した.成果はChemistry Letters誌に発表した(参考文献8,謝辞明記). 一方,レーザ照射直後の試料には炭素凝集体が観測されない.そのため生成した鉄ナノ粒子がヘキサンを分解する触媒として働き,炭素凝集体を生じさせるものと推測した. そこで,水を溶媒に用いて同様にレーザ照射を行ったところ炭素凝集体が生じないだけでなく,平均粒子径がさらに小さい5.7±3.2 nmの分散した球状粒子を得ることができた(図5b).FeCpはシクロペンタジエニル(C5H5)を,FeAcはアセチルアセトナート(C5H7O2)を配位子にもつ(図1).前者はベンゼン(C6H6)と同様にレーザ照射によって炭素凝集体となる.一方,負の電荷をもつ後者は酸化鉄ナノ粒子に配位して表面を覆い,ナノ粒子同士の凝集集体が多く生成したが,TEM-EDSにより得られた元素分布像(図4)から,生成した酸化鉄ナノ粒子に炭素は含まれていないことが分かった.さらにSAEDおよび超高分解能観測による格子縞の測定によって,酸化鉄(Fe3O4)だけではなく純鉄(bcc)も生成したことがわかった. 図2 ChemPhysChem誌に掲載されたイラスト 図3 (a) 120分照射後のTEM像,(b) 平均粒径の照射時間依存性,(c) 120分照射後の粒径分布 図4 TEM像とEDSによる元素分布像 − 350 −

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