助成研究成果報告書Vol33
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キーワード:加工用ナノ秒/フェムト秒レーザー,レーザー加工,2µmレーザー レーザー加工は従来の切削加工では不可能な精度、速度、自由度を可能とし、航空機、自動車、医療機器、スマートフォンなど最先端のものづくりの現場において必要不可欠な存在となっている。近年、我が国の製造業は依然として高い国際競争力を維持してはいるものの、北米、アジア、ヨーロッパとの競争は激化している。またレーザー加工機の心臓部であるレーザー装置については、我が国はCO2レーザーにおいては依然として世界トップの技術を有しているが、近年ファイバーレーザーや固体レーザーへの置き換えが進み、海外の後塵を拝している。我が国が製造業において高い国際競争力を維持し発展を続けていくには、より高付加価値な製品を提供していくことが必要であり、レーザー装置や加工技術はそのための基幹技術となる。 現在高精度なレーザー加工には主として高出力・高効率・高集光性を有した波長 1 μm 帯 Yb レーザーやその高調波が用いられているが、従来とは異なる性質を有す新材料開発も日々進められており、対象物質や目的に応じて最適なレーザー波長を選択することは有効であり、その為の新しい光源技術が必要とされている。例えば短波長では我が国は青色(400-460 nm) LDの独自の技術を有しており、最近ではファイバー結合型の200 W以上の製品が開発されている。銅材は古くからある材料であるが今後電気自動車のモーターなどの部材として一層の需要の高まりが予想されるが、Ybレーザーでは吸収が弱く加工が難しいが600 nm付近から急激に吸収が増加するため高出力な青色LDにより加工が可能と考えらえる。長波長においても国内企業よりEr:ZBLANファイバーを利用した波長2.8 µm帯で動作可能な20 W近い高出力のファイバーレーザーが市販化されており、同じくYbレーザーでは難しいガラスや樹脂の加工応用に利用可能である。 長波長帯のレーザーの中でも特に波長2 μm 帯Tmレーザーが世界で大きな注目を集めている。応用面からみると2 μm 光は前述の2.8 µm光と同様に線形吸収によるポリマー材料の加工か可能であり、2光子吸収を用いたシリコンウェハなどの3次元微細加工への応用も期待される。医療応用においては生体組織に対して適切な侵入深度の下、血液の凝固も作用を伴う、精密で出血の少ない手術への応用が期待されている1)。また実用性を考えると、Tmレー電気通信大学 レーザー新世代研究センター (平成29年度 一般研究開発助成 AF-2017221) 准教授 戸倉川 正樹 2.フェムト秒高エネルギーファイバーレーザーの開発 ファイバーレーザーはその導波路構造と長い有効作用 1.研究の目的と背景 ザーは0.8 μm帯のレーザーダイオードによる直接励起によって、交差緩和過程をともなう量子効率 2 の高効率・高出力なレーザー動作が可能である(連続発振ファイバーレーザーでは平均出力1 kW が 2010 年に報告されている2))。また扱い易いシリカファイバー中を低損失に伝搬可能で空冷動作も可能であり、現在主流のYbファイバーレーザーと同様にコンパクトでメンテナンス性に優れた光源とすることが可能である。 本研究ではナノ秒/フェムト秒領域での高エネルギーな波長2µm帯パルス光源による加工応用を目指した。当初の研究計画ではタイトルにある通り増幅器により高エネルギー化を果たし、加工実験を実施する予定であったが、増幅用レーザー結晶の製造過程において問題が生じてしまったため、扱い易いファイバー発振器からの高エネルギーパルスの直接発生、それを用いた加工応用へと切り替え、フェムト/ナノ秒高エネルギーファイバーレーザーの開発を進めた 本稿ではその詳細と将来展望について報告する。 長から非常に高い利得が得られ、高効率で高出力なレーザー動作が可能であるが、同時に強い非線形光学効果も発生し、高エネルギーなフェムト秒パルス動作は困難であった。近年これを克服すべく、共振器の分散値を制御し全正常分散としたモード同期ファイバーレーザーが開発され、波長1 μm帯では大口径Ybファイバー技術とともに1 μJ以上のパルスエネルギーが実現されており、Ti:Al2O3レーザーを超える高ピークパワー動作が実現されている。全正常分散レーザーでは光パルスは常に正チャープしており、瞬時光強度を抑制している。またパラボリック形状のパルスを形成すると強い非線形光学効果(B積分値>>π)を受けても高次分散の発生を抑制できる。しかし波長2 µm帯では一般的なシリカファイバーは材料分散によって大きな異常分散を有しており、上述の全正常分散動作は難しかった。 本研究ではシリカガラスではなくフッ化物ガラスZBLAN(ZrF4-BaF2-LaF3-AIF3-NaF)ファイバーを利用することによって、波長2µm帯での全正常分散モード同期動作を実現し、高エネルギー動作を可能としフェムト秒レーザー加工を行うことを目的とした。 − 337 −波長2µm帯ナノ秒/フェムト秒光パルス増幅器の開発 および加工応用

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