3.試料作製 4.FT-IR測定結果 反射スペクトルの深いディップは、その波長において共振が起きていることを意味している。GeSbTeの相を変化させることにより、実効的な共振器長が変わり、共振波長が大きくシフトしていることが確認された。また、結晶相の場合の方が共振のQ値が低いのは、吸収が大きい(誘電率の虚部が大きい)ことに対応する。 厚さ0.35mmのバルクSiCを購入し、その表面にGeSbTe薄膜を、厚さ80nmとなるよう設定し、スパッタ成膜した。GeSbTeの組成比は最も代表的な2:2:5とした。成膜にあたっては、産総研のスパッタリング装置を使用した。 GeSbTeメサ構造は、フェムト秒パルスレーザを使用したアブレーションによって形成した。顕微光学系にレーザ光を導入し、NA0.65の対物レンズを通して集光を行った。試料ステージをアクチュエータで走査することにより、所望の構造を作製した。レーザのパルス幅は150fs、中心波長は800nmである。パルスの繰り返し周波数は80MHzであるが、ポッケルスセルを用いて、10Hzに間引いて試料に照射した。これは、高繰り返しによる蓄熱効果によって、アブレーション時にそのエッジにおいてGeSbTeの結晶化を避けるためである。 メサ構造反射鏡としては図6のようなライン構造とメッシュ構造を作製した。表面フォノン・ポラリトンの閉じ込めメカニズムを明確にするため、ライン幅・メッシュ幅、ならびにアブレーション幅(共振器長)をともに3~7mの範囲で変化させ、反射スペクトルの変化を観察した。 図6 GeSbTe反射鏡の構造:ライン構造(左)と メッシュ構造(右) 図7 レーザアブレーションによって作製した GeSbTeライン構造 図7に作製したライン構造の一例を示す。GeSbTeは光吸収が大きく、アブレーション閾値は低い。一方SiCはバンドギャップが大きく、800nmのレーザ光は吸収しないため、GeSbTeとの閾値のコントラストが大きい。そのため容易にGeSbTeのみを選択的にアブレーションすることが可能であった。 GeSbTeのスパッタ膜(アズデポ状態)はアモルファス相である。結晶化にあたっては、QスイッチYAGレーザの第二高調波(波長532nm)を同様の顕微光学系に導入し、試料に照射することによって行った。対物レンズはNA0.1~0.8を使い分けた。レーザのパルス幅は300psである。繰り返し周波数は1kHzであるが、電動シャッタを用い、1パルス単位で照射パルス数を制御した。試料ステージを走査することにより、所望の領域に対して結晶化を施した。 図8に結晶化前後のGeSbTeライン構造、メッシュ構造のレーザ顕微鏡写真を示す。結晶相はアモルファス相よりも反射率が高く、右図において、より白く見えている箇所が結晶化領域である。 図8 結晶化前(左)、結晶化後(右)のGeSbTe 作製した試料に対して、顕微FT-IR反射スペクトル測定を実施した。測定には島津製作所製・AIM-9000を使用した。30m×30m程度に観察領域を限定し、その中に存在する同一構造の複数の共振器の反射スペクトルを同時に測定した。 図9にライン構造とメッシュ構造の共振器を比較した結果を示す。共振器長は5mとしている。構造の違いに起因して、反射の際の位相差が異なり、ディップ波数がシフトしていると同時に、メッシュ構造の方が共振器の総体積を大きくとることができ、深いディップを得ている。 図10にライン構造で共振器を形成した場合の結果をまとめている。共振器長が2~5mの範囲、0.5m刻みで異なる共振器を作製し、それぞれについて反射スペクトルを測定した。最も大きなディップに着目すると共振器長が長くなるにしたがい、その波数が低波数側に系統的にシフトすることが確認された。また、共振器長が長い場合、高波数側に高次の閉じ込めモードによるディップが確認さメサ構造のレーザ顕微鏡写真 − 326 −
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