助成研究成果報告書Vol33
326/466

キーワード:フォノン・ポラリトン,共振器,相変化材料 2.GeSbTe/SiCフォノン・ポラリトン共振器 2・1 SiCフォノン・ポラリトン あるいは分子認識能の向上は、化学センシングやバイオセンシングにおいて普遍的な課題である。分子検出の原理は電気的検出と光学的検出に大別され、それぞれの長所を活かした研究が進められている。電気的検出の場合、分子選択性を有するタンパク質や酵素の選定と基板への固定化技術、再利用のための検出分子の脱離などが必要であり、コスト面で多くの問題点を抱えている。一方、光学的検出の場合、分光情報を通して分子識別が可能であり、上記の問題点とは無縁であるが、さらなる高感度化が求められている。 光学的検出における高感度化の方策の最有力候補が表面増強赤外吸収分光法(Surface Enhanced Infrared Absorption; SEIRA)の活用である。金属ナノ構造近傍に発生するプラズモン共鳴増強電場や極性半導体のサブミクロン構造近傍に発生するフォノン・ポラリトン共鳴増強電場を利用し、検出分子による微小な光吸収を増幅することを基本原理とする。いずれにおいてもナノからサブミクロンスケールの構造体を作製する必要があり、電子線描画、反応性イオンエッチング、ウェットエッチングなどの複数のプロセスを駆使しなくてはならない。また、構造体形成後に共鳴を検出分子の吸収線にチューニングする手段がないため、素子作製の歩留まりにも課題がある。 以下で述べる通り、本研究では、カルコゲナイド相変化材料の薄膜(50~200 nm)に対して結晶化・アモルファス化を誘起する。所望の相状態を得るためには、レーザ波長、フルエンス、パルス数を通して、高密度電子励起とそれにともなう熱発生を適切に制御することが必要であり、通常のアブレーション加工とは異なるプロセス最適化が必須となる。 本研究では、極性半導体表面に発生する表面フォノン・ポラリトンを、カルコゲナイド相変化薄膜を反射鏡として2次元的に閉じ込める「共振器構造の作製」と「実効的共振器長の微調整(共鳴波長のチューニング)」の両方をレーザプロセッシングのみで実現する手法を開発する。 具体的には、図1の共振器をレーザアブレーションによってまず形成する。さらに相変化反射鏡の相状態をレーザ誘起相変化によって制御し、複素屈折率の変化を通してフォノン・ポラリトン反射時の位相変化(実効的共振器長)1.研究の目的と背景 液中、大気中における特定の分子の検出とその高感度化、慶應義塾大学 理工学部 電気情報工学科 (平成29年度 一般研究開発助成 AF-2017218) 教授 斎木 敏治 をチューニングする。プロセッシングと位相変化量の両方を考慮した相変化薄膜の最適厚さの決定、共振器配列周期の決定、ならびに複数の極性半導体への適用により手法の妥当性を確認することを主たる目標とする。 図1 相変化材料を反射鏡とする表面フォノンポラ 金属はプラズマ周波数以下において、誘電率が負となり、空気/金属界面に表面局在波を励起させることができる。これは表面プラズモン・ポラリトンと呼ばれ、電磁場の局在性と同時に、電場増強をともなうため、種々の表面分光に広く活用されている。大半の金属は可視光近傍において有効な局在波が励起される。本研究では、赤外分光への応用を想定し、極性半導体に対して励起可能な表面フォノン・ポラリトンを利用する。光とフォノンの相互作用が強い材料では、縦波光学フォノン(LO)と横波光学フォノン(TO)のエネルギー差(ギャップ)が大きく、そのギャップの周波数領域において、誘電率が負となり、表面プラズモン・ポラリトンと同様の原理で、局在表面波を励起することができる。フォノンは原子の振動であるため、その周波数はプラズマ周波数よりもずっと低く、表面フォノン・ポラリトンは赤外域にて励起される。表面フォノン・ポラリトンの分散関係を図2に示す。TOフォノンとLOフォノンのギャップ領域でのみ、励起が可能である(赤実線)。 本研究では、極性半導体としてSiCを使用した。SiCはTO、LOフォノン周波数がそれぞれ、約780cm-1、970cm-1であり、ギャップが大きい材料である。またフォノンのダンピングも小さく(コヒーレント時間が長い)、共振器に閉じ込めた際に鋭い共鳴が期待される。これは波長選択性リトン共振器の概念図 − 324 −レーザプロセッシングの開発 相変化材料を用いた表面増強赤外分光素子作製のための

元のページ  ../index.html#326

このブックを見る