助成研究成果報告書Vol33
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図10 陽極酸化皮膜+レーザ照射した試験片の剥離 4.結言 マルチマテリアルを創成するため,マグネシウム合金と謝 辞 参考文献 表6 陽極酸化処理前後の試験片へのレーザ照射 による接合強度 レーザ照射時間陽極酸化未処理陽極酸化処理0.01 ms0.05 ms0.1 ms0.5 msじたくぼみの深さが,照射時間の増加とともに拡大し,アンカー効果が作用したことに起因する. 次に,陽極酸化処理した試験片に関して,0.01 msのレーザ照射時間による接合強度は7.9 MPaであり,この値は,レーザ照射なしの試験片の接合強度よりも低かった.図9(a)に示すように0.01 msのレーザ照射時間後に形成されたくぼみは深くない.密着性向上に寄与する陽極酸化皮膜がレーザ照射により除去されため,0.01 msのレーザ照射時間後の接合強度は,レーザ照射を行わない場合と比較して低下したものと考えられる.一方,接合強度は,レーザ照射時間の増加とともに向上するが,これは図9に示すようにくぼみの深さが,照射時間の増加とともに深くなり,陽極酸化皮膜のない場合と同様,アンカー効果が作用したことに起因する.0.5 msのレーザ照射時間で処理された試験片の接合強度は11.8 MPaであり,この値は目標値である10 MPaを超えた.この優れた接合強度は,図9(d)に示すように陽極酸化皮膜と50μmを超える深いくぼみの組み合わせによるものと思われる. 図10には,陽極酸化皮膜に対してレーザ照射を行った試験片の剥離面を示す.剥離面の接着剤について,0.05 msのレーザ照射時間の試験片では部分的に付着している.一方,0.5 msのレーザ照射した試験片では,剥離した両面に接着剤が付着しており,この剥離面の接着状態は接合強度と一致した. 最後に陽極酸化皮膜に照射時間0.5 msのレーザ照射を行い,接着剤に常温硬化型2液アクリル弾性接着剤を用い,各種エンジニアリングプラスチックを接着した後,引張試験を行った結果,エンジニアリングプラスチックが破断することを確認した.この結果は,両者間の接着強度がエンジニアリングプラスチックの引張強度を上回っていることを示しており,本研究で提案した陽極酸化処理+レーザ照射は,マグネシウム合金-エンジニアリングプラスチックを接合したマルチマテリアルの創成に向けて有効な手法と思われる. エンジニアリングプラスチックなどの異種材料を接合する際の接着特性に対するマグネシウム合金の表面処理およびレーザ照射の影響を検討した.AZ91Dマグネシウム合金にリン酸塩陽極酸化を行うことによって多数の微細5.1 MPa7.9 MPa5.5 MPa8.7 MPa6.1 MPa7.3 MPa7.4 MPa11.8 MPa面 (a)レーザ照射時間:0.05 ms (b):0.5 ms な孔を有する陽極酸化皮膜を形成ることができた.しかし,この皮膜の表面極性が接着に適していないことがわかった.希硝酸溶液に浸漬する後処理は,皮膜の接着特性を大幅に改善することが明らかになった.陽極酸化処理による皮膜はレーザ光の吸収を向上させ,ディンプル加工を容易にした.また,後処理を施した陽極酸化皮膜にディンプル加工を行うことによって接着強度を未処理のそれと比較し,2倍以上向上させることができ,マグネシウム合金-エンジニアリングプラスチック接合によるマルチマテリアル創成に有用な手法として期待される. 本研究は,公益財団法人天田財団の平成29年度一般研究開発助成(AF-2017217)を受けて実施されたものであり,厚く謝意を表します.また,本研究を遂行するにあたり,ご協力頂いた広島工業大学の桑野良一准教授に厚く御礼申し上げます. 1) M. Hino, Y. Mitooka, K. Nagata, T. Kanadani:J of Japan Laser Processing Soc., 22 (2015), 159. 2) S. Takeda ; Materia Japan, 53 (2014), 594. 3) T. Miyake:The Japan Research and Development Center for Metals NEWS, No.352 (2016) 4) T. Yamada, K. Himuro, K. Yamamoto, C. Sato:Proc. 48th Cong. The Adhesion Society of Japan, p.199 (2010). 5) 日野 実・西條充司:表面技術, 69 (2018), 613. 6) 特許第 4686728号:酒井宏司・奥田保廣・日野 実・平松 実 7) M. Hino, R. Kuwano, N. Nagata, K. Nagata, T. Kanadani:Materials Science Forum Vols. 941 (2018), 1815. 8) K. Kuroda:J. Surf. Finish. Soc. Jpn., 46 (1995), 415. − 323 −

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