助成研究成果報告書Vol33
321/466

キーワード:異材接合,マグネシウム合金,マルチマテリアル 1.研究の目的と背景 自動車などの輸送機器分野では,CO2排出量削減・低燃費化への対策として,使用する材料に対して軽量化が要求されている.この差し迫った問題に対応するため,高強度アルミニウム合金などの軽金属,エンジニアリングプラスチックなどの軽量材料ならびに高張力鋼やホットスタンピングによる1800 MPa級の鉄鋼材料等の適用が拡大している1).特にマグネシウム合金は,軽量で剛性が高く,放熱性,防振性,電磁波シールド性,リサイクル性に優れるなど,多くの特性を有しているため,現在,輸送機器分野では,車両の軽量化効果の大きな材料として,その適用は年々増加している2). 一方,近年,異なる材料を組み合わせたマルチマテリアルが,軽量化をはじめ様々な機能を付与することのできる新しい概念の材料として注目されている3).単一材料からマルチマテリアル化するためには異種材料間の接合が必須であることから,今後,異種材料間での接合技術が重要になると推測される.現在,異種材料間の接合に対して,信頼性の観点より,ボルトやナットによる機械的締結が多く適用されているが,生産性が低く,生産コストが高いなどの問題点もある.そのため,自動車,電気・電子機器,航空機部品の加工・組立において,接着剤を利用した異種材料の接合が適用されている.しかし,接着の問題点として,接合強度にばらつきが生じやすく,信頼性に問題がある4).金属-樹脂間の接着において安定した接合性を実現するためには金属を接着に適した表面に改質することが重要になる.特にマグネシウムは電気化学的に活性な金属であるため,長期信頼性の観点から表面処理が必要不可欠であり,これまで著者らによって開発されたリン酸塩陽極酸化処理5)が優れた防食性を有する表面処理法として,現在,自転車部品や釣り具などのレジャー製品およびオートバイなどの輸送機器を中心に適用され,製品の信頼性向上に寄与している. 本研究では,軽量化効果の期待できるマグネシウム合金とエンジニアリングプラスチックを接合したマルチマAl AZ91D 9.00 表1 AZ91Dマグネシウム合金の化学組成 (重量 %) Zn Mn 0.75 0.04 広島工業大学 工学部 機械システム工学科 (平成29年度 一般研究開発助成 AF-2017217) 教授 日野 実 テリアルの創成を目的とし,AZ91Dマグネシウム合金の接着性に及ぼすリン酸塩陽極酸化処理およびレーザ加工の影響を検討した. 2.実験方法 2・1 陽極酸化処理 実験には,表1に化学組成を示したAZ91Dマグネシウム合金(100×20×2 mm,以下,AZ91D合金と記す)を使用した.接着では,表面形状に基づくアンカー効果の影響を受けるため,処理前のAZ91D合金板材に対して#1200の耐水研磨紙による研磨を施した.リン酸塩陽極酸化処理は,前処理としてリン酸を主成分とする酸性溶液による酸洗,続いてNaOHを主成分とする溶液によるデスマットを行った後,表2に示した電解条件6)に従い,陽極酸化処理を行った.膜厚は最終電圧を330~400Vまで変化させることによって調整し,その際,膜厚測定にはケット科学研究所製の膜厚計を使用した.続いて陽極酸化処理後に後処理(硝酸溶液(0.091mol/L)に浸漬)を施した試験片も併せて評価した.また,得られた陽極酸化皮膜の表面および断面観察を行った. 2・2 レーザ照射 研磨したままの試料および陽極酸化処理を行った試料に対して,ファイバーレーザマーカー(最大出力20W,(株)アマダミヤチ製)を用い,表3に示す条件に従い,ドット加工を行った. Si Fe 0.04 0.003 表2 陽極酸化処理の条件 リン酸塩:0.22±0.2(mol/L)アンモニウム塩:pH 調整添加剤:適量電解液浴 pH10.5±0.5最終電圧330-400 (V)浴温298±5 (K)Cu Ni Be 0.005 0.0007 0.0015 Mg bal. − 319 −レーザプロセッシングを利用したマグネシウム合金- プラスチック異材接合によるマルチマテリアルの創成

元のページ  ../index.html#321

このブックを見る