助成研究成果報告書Vol33
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図9 Ashby-Gibsonモデル12)との比較 図10 試験荷重 5 kNと10 kNの時の等価ヤング (1)造形条件を適切に設定すれば,骨と同等の等価ヤンAshbyらのモデルは,図9の中に示したように,エッジと呼ばれている梁で構成されている.エッジの中央のノードに荷重が作用したときの梁のたわみから式(2)を導出した.本研究の結果と式(2)の計算値を示したのが図9となる.計算値は実験値と近いところもあるが,レーザ強度を変化させたものに対しては,64~70%の充填率ではヤング率は計算値の値よりも小さく(H-,H,H+),それ以上の充填率では逆に計算値よりもかなり値が大きく(I,J)なっている.このようになるのはAshby-Gibsonで仮定している構造と,本研究の構造が異なっているからだと考えられる. SLMでは,レーザの高出力 (200W~400W) 化のために,ほぼ100%の密度のものも製作可能となっている.これは,高い強度を求める要望にそっているので好ましいことである.しかし,緻密体のためにヤング率は溶製材と同じ値になってしまう. (2)造形後に加圧により若干の変形を加えることにより,(3)エネルギー密度Hの造形条件では,圧縮試験荷重にかかわらず,等価ヤング率はほとんど変化することなしに推移した. (4)レーザ出力6.8~30Wの範囲では,焼結物の造形精(5)低ヤング率化に組織の相変態は関係していない. 1) 京極秀樹:金属3Dプリンタの開発動向と今後の展開,近畿大学次世代基盤技術研究所報告,5 (2014), 139–143. 2) J.-P. Kruth, G. Levy, F. Klocke, T.H.C. Childs: Consolidation phenomena in laser and powder-bed based layered manufacturing, CIRP Annals, 56–2, (2007), 730–759. 3) N. Guo, M.C. Leu: Additive manufacturing: technology, applications and research needs, Frontiers of Mechanical Engineering, 8–3 (2013), 215–243. 4) J. Parthasarathy, B. Starly, S. Raman, A. Christensen: Mechanical evaluation of porous titanium (Ti6Al4V) structures with electron beam 率とエネルギー密度の関係 エネルギー密度が100~200 J/mm3のところ(H-,H,H+)で,ヤング率が低下する現象を考えるときに,構造ではなくて金属組織が変化しているとも考えられる.純チタンは885℃で相変態を起こして,α相の稠密六方格子(hcp)からβ相の体心立方格子(bcc)となる.レーザ照射により加熱急冷されることにより,室温状態でも体心立方格子となってしまい,ヤング率が低くなった可能性も考えられる.そこで,造形条件の異なる3つの試験片についてEBSD分析を行った.結果を図10に示す.相分布を見ると,3つの造形条件で赤色であることが分かる.すなわちすべてα相でありβ相は存在していない.したがって,エネルギー密度が100~200 J/mm3のところでのヤング率低下には,相変態の影響はないことが分かった. 6.まとめ インプラントには,応力遮蔽を防止する理由から,骨と同等のヤング率が望まれる.低出力レーザを用いると微細な内部構造を持つ造形物が作製できるので,焼結時点で骨と同等のヤング率をもつ造形物とすることができる.本研究ではこのことを確かめるために,30W以下の低出力レーザを用いて,5 mm立方の造形物を作製し,圧縮試験により等価ヤング率を算出した.また,造形物の密度と断面をSEMで観察した.その結果以下の結論を得た. グ率を持つ造形物を作製することができる. 焼結物のヤング率を望む値に変更できる. 度は0.5mm以内である. 今回の低出力レーザ積層造形では,結言(3)のような特異的な材料特性を有するものを作製することができた.インプラント材に適用した場合,人工関節のステムなど髄内に圧入するような時でも,変形しやすくしかも骨と同程度のヤング率を示す材料として有効に使用できる可能性が考えられる. 謝 辞 参考文献 本研究は,公益財団法人天田財団からの一般研究開発助成により実施した研究に基づいていることを付記するとともに,同財団に感謝いたします. − 291 −

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