図6(i),(j)のレーザ出力30.1Wの造形物Jでは,約200~300 mに肥大したクラスタがレーザ走査方向に連続的に連なっている.レーザ出力を増加させると積層深さ方向とレーザ走査方向共に溶融範囲が拡大する.それにより,クラスタ同士の焼結融合が活発になることで連続的な焼結が進み,緻密な構造となっている. 図7には等価ヤング率とエネルギー密度の関係を,2つの圧縮試験荷重について示した.これより,等価ヤング率はエネルギー密度,①25.9~77.7 J/mm3,②102~218 J/mm3,③250~344 J/mm3の3つに分類できる. 図8 造形物 E の圧縮試験前後の断面組織 図7 試験荷重 5 kNと10 kNの時の等価ヤング率る様子が確認できる.積層厚さを増加させたことで,一層分の粉末量が増加する.そのため,積層深さ方向の溶融が進み,多くの粉末が凝集されたことでクラスタの粒子径が大きくなったと考えられる.その一方で,大きな空隙も現れている.これは,粉末の供給量が決まっていることが原因ではないかと考えている. これまで比較した造形物C, E, Gは図3のエネルギー密度が最も低い25.9 J/mm3と同一の条件のものである.エネルギー密度は同一の値であるが,パラメータによって充填率が異なることが分かる.したがって,式(1)は修正する余地があると考えられる. 袴田らはポーラス金属の研究を行い,圧縮強度や降伏応力は相対密度(充填率)に依存するとしている11).しかし,図5より本研究で作製した造形物の充填率と等価ヤング率には強い相関は見られなかった.袴田らのスペーサー法により作製されたポーラス金属はその製法から空隙が独立しているのに対して,本研究で作製した造形物は空隙が不規則に連なっている.両者のこのような構造上の違いが変形特性に現れたものと考えられる. エネルギー密度が①の領域で作製された造形物は,レーザ出力が6.8Wで共通であり,造形物Aの充填率が最も高い.図8には造形物Eの圧縮前後の垂直断面画像と二値化画像(白い部分がクラスタで,黒い部分は空隙)を示す.これより,圧縮前は充填率59.2%と空隙が多いが,クラスタのネック部強度が弱いため,圧縮によってネック部が塑性変形し,緻密化(充填率75.6%)されていることが分かる.したがって,エネルギー密度①における等価ヤング率の上昇は,圧縮による造形物内部の緻密化によると考えられる.図11(a)において造形物A以下のエネルギー密度ではヤング率が10 GPa以下であるのに対して,圧縮荷重10kNを加えた図11(b)において40 GPaに上昇したのは,この機構による. エネルギー密度②の領域で作製された造形物は,エネルギー密度を増加させたことで領域①に比べてクラスタとネックが成長している.主にネック部の強度が増加したことで10kNの圧縮ではクラスタの緻密化がそれほど進まないと考えられる. エネルギー密度③の領域で作製された造形物は図6(i),(j)の組織写真から分かるように,肥大化したクラスタが連続的に焼結されており,空隙も少なくなっている.したがって,焼結した段階でかなりの緻密体となっているため,高いヤング率を示したと考えられる.また,これらの肥大化したクラスタは,圧縮荷重を受けることで容易に接触を開始するので,ヤング率はますます母材の値に近づくことになる. 「1.研究の目的と背景」で述べたが,SLMで密度100%の造形物は作製できるが,ヤング率は高いままである.ヤング率を下げるためには,ストラット構造にするしかなく現在はこの方法がとられている.このような構造に対してAshby-Gibson12)によってヤング率と充填率(相対密度)の関係が式(2)のように求められている. �∗��=��∗����・・・(2) ここで,�∗:ポーラス材料のヤング率,��:緻密材のヤング率,�∗: ポーラス材料の密度,��: 緻密材の密度 とエネルギー密度の関係 (a) 試験荷重 5 kN (b) 試験荷重 10 kN 4.圧縮荷重と等価ヤング率の関係 5.圧縮荷重と等価ヤング率の関係 − 290 −
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