一方,濃度の高い0.001 mol/L,0.01mol/L硝酸銀水溶液シリーズでは,銀イオンの溶出量は時間の経過と共に増加 図6 溶出イオンの測定結果(累計) 図7 一時間あたりに換算した溶出イオン量の比較 図7に,各硝酸銀水溶液濃度下における一時間当たりの銀イオンの溶出量・溶出速度を調べた結果を示す.同図より,浸漬の開始から6-12hで一時間当たりの銀イオンの平均溶出速度が最大となり,時間の経過と共にその速度は低下していることが分かる.これは,0-6hの浸漬初期段階では,改質層に含有されている銀粒子は比較的安定したしていることから,さらに長期間の溶出が継続することが予想される. 状態となっており,その後,時間の経過と主に銀イオンの溶出が活発になったためと考えられる.また,同図より静的浸漬から6-12hをピークに,その後は銀イオンの溶出速度が徐々に低下していくことが分かる.これは,長期間にわたる銀イオンの溶出により,改質層表面に含有されている銀粒子の量が減少したためと考えられる. 実際には二次感染を防ぐため,強い抗菌効果が求められ,安定した後は歯周病や虫歯予防の観点から,比較的弱い抗菌効果が求められる.したがって,本研究で提案した処理は,医療分野において今後大きく実用化が期待できる. 4.まとめ 本研究では,レーザ誘起湿式改質処理を用い,浸漬液である硝酸銀水溶液の濃度の差がチタン合金の表面に与える影響を調べるため,異なる浸漬液濃度下におけるそれぞれのチタン合金に対してレーザ照射を行った.その際,形成された改質層に対し,被処理面の特性を評価し,考察を加えた.以下に得られた知見を示す. (1)硝酸銀水溶液を浸漬液とし,レーザ誘起湿式改質処理を施すことにより,基材表面には微細な銀粒子が生成された.また,浸漬液の濃度が高くなるにつれ,表面に含有される銀の量も増加するといった,対数関係であることが明らかとなった. (2)浸漬液である硝酸銀水溶液の濃度の違いは,形成される改質層の銀イオンの溶出量に影響を及ぼし,濃度が高いほど銀イオンの溶出量が多いことが分かった.また,浸漬液の濃度にかかわらず,銀イオンの溶出速度は静的浸漬から6-12hをピークにその後は長期および長長期にわたり緩やかな速度で溶出することが明らかとなった. − 286 −
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