図4 イオン溶出試験の様子 図5に,0.9%NaCl試験溶液における銀イオンの溶出結果を示す.同図より異なる硝酸銀水溶液濃度下で,レーザ誘起湿式改質処理により形成された全ての試験片において,24日目まで銀イオンの溶出が確認されることが分かる.また,全ての溶出試験で銀イオンの溶出量が0.4ppm以下であることが分かる.これは,水中の銀イオンの溶解度が0.4ppmであることから,本溶出試験では全ての銀イオンは飽和状態にならず,持続的な銀イオンの溶出が実現できたからであると考えられる. 図5 浸漬時間と溶出イオン量の関係 3・2 被処理面からのイオン溶出試験 図6に,一試験片当たりの24日間の合計銀イオンの溶出量を示す.同図より,銀イオンは長期にわたり溶出し,図3 被処理面のAg元素濃度と浸漬液濃度の関係 いた.同容器底面に乾燥させた試験片を置き,試験溶液25 mLを注入した.サンプル数は,n = 3として実験を行った.静的浸漬の期間は24日間とし,その間同容器は37℃に維持した恒温槽内に静置し,溶液の飽和を防ぐため,段階的に試験溶液を交換した.図4に溶出実験の模式図を示す. 時間が経過するにつれて全てのシリーズにおいて銀イオンの溶出量も増加することがわかる.また,硝酸銀水溶液の濃度が高いほど銀イオンの溶出量も多くなったが,溶出初期段階においては,銀イオンの溶出量には差は認められない.しかし,溶出される銀イオンの増加量は時間の経過と共に減少しており,その関係は対数関係になっていることが分かる.0.0001mol/L硝酸銀水溶液シリーズにおいては,静的浸漬の10日目と24日目では,銀イオンの溶出量にほぼ差はなかった.これは,0.0001mol/L硝酸銀水溶液シリーズに含有している銀の粒子が少なく,早期に溶出したためと考えられる. 分かる.また,EDXによるマッピングを行った結果,白い粒子は銀であることが判明した.これは,被処理材にレーザを照射した際,高いエネルギーを保持しているため,被処理材の表面で蒸発,溶融しているためである.硝酸銀は362℃で熱分解され銀元素が生成されるため,被処理面が加工されると同時に,浸漬液も加工され,溶融した表面が凝固する際に被処理面に取り込まれたと考えられる. 硝酸銀水溶液の濃度が改質層に含有される銀元素の量に与える影響を調べるため,EDXによりまず銀元素の原子数濃度を測定した.その結果を図3に示す.同図より,いずれの硝酸銀水溶液の濃度の溶液を用いて処理を行った場合にも,被処理面には銀が存在していることが分かる. レーザ処理によりチタン合金表面にそれぞれ1 at.%, 2 at.%, 5 at.%の厚さ0.3 mmの銀を含有するヒドロキシアパタイト層を作製し,それらの表面で細菌の培養を行った過去の結果では,1%の銀の改質層でも抗菌性はあることが明らかになっている.今回の実験ではいずれの試験片の表面でも銀の濃度は1%以上となっており,抗菌性の効果は十分期待できると考えられる. 図2 被処理面のSEM観察とEDXによるAgマッピング 改質処理された試験片を使用した.その後,試験片はアセトンおよび超純水でそれぞれ15分間超音波洗浄し,さらに80℃の恒温槽中で5時間静置し,乾燥させた. 静的浸漬試験はJIS T0304「金属系生体材料の溶出試験方法」に則り実施した.試験溶液には,より生体内の環境に近づけるため生理食塩水(0.9%NaCl)を用いた.浸漬容器は,イオン溶出に影響を及ぼさないポリエチレン容器を用0.0001mol/L, 0.001mol/L, 0.01mol/Lの硝酸銀水溶液を浸漬液とし,それぞれの濃度下においてレーザ誘起湿式Polyethylene vessel Saline Treated surface Specimen − 285 −
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