助成研究成果報告書Vol33
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3.実験成果 図5 マイクロ流路表面へのレーザ改質による親水性の賦 与と抗体溶液の広がる様子 図3 レーザ改質とインクジェット印刷によるプラスチック表面への抗体分子の固定化 図6 簡便な取り扱いで測定ができるマイクロ流路型の診 断用チップ 図4 異なるレーザフルエンスでのレーザ改質に伴うCy3 標識抗体の固定化とその状態 3.2 診断用チップの性能 本法によって作製された診断用チップを用いて、マイクロプレートを用いたEIA法との性能比較を行った。当初は炎症性バイオマーカーとして知られているCRPをモデルタンパクとして用いることを予定していたが、CRPの臨床基準値は0.3 mg/dLと高濃度であることから、本マイクロ流路チップとマイクロプレートEIA法による性能について大きな差は認められなかった。低濃度域での性能比較を行うことも考えられたが、健常人のCRPの僅かな変動を見ることについては臨床的有効性が認められないため、CRPではなく骨粗鬆症やがん転移のバイオマーカーとして知られている、血中Ⅰ型プロコラーゲンC末端プロペプチド(PICP)を用いることとした。 マイクロプレートEIAでは抗原添加時に抗体と反応させる最短時間が30分以下になると、抗原抗体反応に伴う特異的なシグナルが見られなかった。また標識抗体をウェルに添加して20分以上が経過しないと、特異的なシグナルを得ることが困難であった。これに対して診断用チップでは、抗原添加時に抗体と反応させる時間が15分程でも、抗原抗体反応に伴う特異的なシグナルが見られた。また標識抗体をチップに添加して10分間反応させると特異的なシグナルを得ることができた。このことから診断用チップは短時間で検査を終えることができることが確認された。 またマイクロプレートEIAとの相関性についても、PICPの濃度が0-800 ng/mLの範囲で化学発光シグナルの増加率に大きな差は認められなかった。 そこで本研究では、非特異的吸着を洗浄除去する際に使用する同じ界面活性剤を用いることで、マイクロ流路表面のデブリを超音波洗浄できないかと考えた。これまでデブリが散乱している状態のマイクロ流路は、流路内での液の流れを安定に保つことが困難であったため、洗浄除去できたかどうかは、実際に液を流動させて問題無く流れることを確認することで条件を得た。結果として0.5%のTween20の界面活性剤を含むリン酸緩衝液(pH 7.4)を用いて超音波洗浄を15分間行ったところ、マイクロ流路内を液が留まることなくスムーズに流れる結果を得た。 3.1 簡便な診断用チップの作製法 これまで毛管力で液を流動させることで、マイクロポンプ等を必要としない診断用チップを作製してきた。しかし毛管力を駆動力として用いるマイクロ流路チップのデメリットは、流路表面の濡れ性が疎水性の場合、液が流路内に留まる力も強く作用してしまうため、一度液を流動させると、別の新しい液を再びマイクロ流路内に流動させることが困難になる点である。そこでマイクロ流路内に規則的な周期構造を設けることで、マイクロ流路の入口に液を滴下すると微小空間でも液がスムーズに親水性を維持しながら流動していくことを見出した。実際にレーザ表面改質を行ったときと、表面改質を行っていないときの接触角を調べると、改質表面では接触角が10°以下になり、親水性を保たれていることが示された(図5)。更に液の流れ方向に対して周期構造を設けるとスムーズに液が流動するため、新しい試薬をマイクロ流路内に毛管力で流動させるときは、片方の貫通孔に吸収紙を押し付けるだけでマイクロ流路内の液を簡単に除去することができるようになった(図6)。これまで、吸収紙を貫通孔の入口部に押し当てても、吸収紙の毛管力とマイクロ流路内の毛管力が共に強く作用するため、貫通孔の入口部に空気が流動してエアーギャップが発生し易くなることにより、流路内の液を取り除くことが出来なかった。そのため本法により簡便な取り扱いが可能になった。 PMMAへのfsレーザ表面処理あり(a),なし(b)に対する接触角レーザ表面処理あり(a),なし(b)に対する抗体溶液の広がる様子− 276 −(a)(a)(b) (b)

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