1点あたり100滴(体積6.5nl) 図2 プラスチック基板表面でのサンドイッチ免疫アッセ イ法による抗原抗体反応の原理 図1 レーザ照射による表面改質とインクジェット印刷に よる免疫アッセイ用診断チップの連続作製 ン速度を1.5-10 J/cm2と20-1000µm/sの範囲で検討を行った。その結果、1.5 J/cm2/で100µm/sのときに最も良好な結果を得た。 抗体液の基板への塗布と固定化についてはクラスターテクノロジー社製(日本)のインクジェット印刷装置(Pulseinjector®)を用いた。塗布する抗体は高価で高濃度なため、塗布する量と塗布される位置は精密に制御される必要がある。本法では、流路幅が数百µm-数mmの流路内に正確かつハイスループットに高粘度の抗体溶液を塗布していくことから、使用できるインクジェット印刷装置はこれらの要求を満たす必要がある。Pulseinjectorはピエゾ駆動により高粘度の液を塗布することができ、マイクロスコープを用いて塗布されている様子を常時観察することができる。また高濃度の抗体溶液は高価であることから、使用後にノズル内に残った抗体溶液は回収できることが望ましい。本Pulseinjectorは、抗体液を容易に回収できるノズル構造であることから、繰り返し高価な抗体溶液を用いることを可能にした(図1)。 2・2 測定条件の検討 マイクロ流路表面に高濃度の抗体を塗布した後、圧力感受性の透明の粘着フィルムを貼り付けて流路表面をカバーした。その後、流路の両端に貫通孔を設けて、片方の端に検体や試薬を滴下した場合、毛管力によって液がマイクロ流路内を流動するようにした。モデル抗原として、骨粗鬆症やがん転移のバイオマーカーとして知られている、血中Ⅰ型プロコラーゲンC末端プロペプチド(PICP)を用いた。抗原をマイクロ流路中で補足するための抗体と、シグナルを出すための標識抗体はPICP用のモノクローナル抗体(タカラバイオ)を使い、リン酸緩衝液で0.1 mg/mlに希釈して使用した。また抗原抗体反応に依らない、マイクロ流路表面への非特異的吸着を抑制するためブロッキング試薬(StabilCoat, XLC社製・アイルランド)を用いた。ブロッキング試薬は、マイクロ流路表面への抗体や抗原の非特異的な吸着を抑制することを目的に用いられる。非特異的な吸着はバックグラウンドを高くするため、S/N比が小さくなり微弱なシグナルは検出できない。加えて本 研究では、このブロッキング試薬を抗体固相化時に適用することで、抗体の保存安定性を長期間安定化させることに成功した。また使用される試薬は全て4℃の冷蔵庫に保存して、使用するときは室温に戻してから使用した。 チップの作製はレーザで表面改質を行った後、ピエゾ駆動のPulseinjectorでマイクロ流路表面(幅×高さ:300µm×100µm)へ30nLの抗体液を連続的に塗布して印刷を行う。表面改質とインクジェット印刷の部位についてマイクロスコープで予め位置決めをしておくことで、スループットに抗体固相化の界面の作製が可能となった。その後、ブロッキング液を流して室温で4時間放置して自然乾燥させた後、使用するまで診断チップは4℃下で保存した。 測定の操作は、診断用チップのフィルムカバー面を下にして、貫通孔の上部に液を滴下する。毛管力によって液がマイクロ流路内へ流動した後、流路内の液を除去して再度新たな液を貫通孔の上部に滴下する。原理はEIA法によって行い、必要な試薬を順次滴下していく。これらの操作はポンプ等の外部装置は必要としない。 操作者は、①チップに洗浄液を2回滴下する、②検体液を滴下して10分間放置・固相化した抗体と検体中の抗原を反応させる、③洗浄液を2回滴下して反応していない抗原液と夾雑物を洗浄除去した後、ペルオキシダーゼ標識抗体を滴下、④5分放置・反応していない標識抗体を除去するため洗浄液を滴下、⑤化学発光基質液を滴下して10分後発光強度を測定する(図2)。 2・3 超音波と界面活性剤によるデブリの除去 アクリル表面へレーザ照射した際に発生するデブリは、抗体をマイクロ流路の基板表面へ安定的に固定化す際にバラつきを生む主な要因となる。前回の研究助成では、エッチング液を使用することで、デブリの除去を可能にしたが、この方法ではレーザ改質された基板表面の官能基も除去してしまう。具体的にはパルス波のレーザ照射でアクリル基板の局所領域に規則的な周期構造と照射エネルギーに応じた親水性のカルボニル基が賦与されるため、エッチング液を用いると、デブリの洗浄除去に加えて、カルボニル基の表面も洗浄される。そのためアミノ基を有する抗体分子を基板表面に固定化することが困難になると考えた。 抗体固定化ブロッキング抗原抗体反応発光検出一次抗体抗体濃度0.1mg/ml二次抗体標識物質抗原− 275 −
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