2.実験方法 2.1 実験装置 キーワード:ピコ秒レーザー,貫通孔,電極集電箔 る3).これらの技術も活用し,次世代型蓄電デバイスの孔 1.研究の目的と背景 近年,太陽光発電や風力発電等のクリーンな発電への重点シフトが徐々に進みつつあるが,その多くは天候まかせで出力が安定しないという問題を抱えている.こうした電力を安定的に取り出すには,発電量が増えたら余った電力を一時的に蓄え,逆に発電量が減ったらそれを補って放電するような,大容量の蓄電装置が必要である.こうした用途の蓄電装置としてこれまで有力視されていたものに,ナトリウム・硫黄電池とリチウムイオン電池があり,さらに第3の選択肢として,リチウムイオンキャパシタ(LIC)が存在する1). LICとは,電気二重層キャパシタの正極とリチウムイオン電池の負極を組み合わせたハイブリットの蓄電装置である.これは極めて充放電速度が速く,リチウムイオン電池に対し出力密度や充放電の繰り返し可能回数が大幅に改善されているものの,一方で容量が稼ぎにくく,内部抵抗によるロスも大きいという問題点がある.LICの主要構成部品である電極集電箔には,リチウムイオンの拡散を促進させるために,φ200~300μmの貫通孔が多数形成されている.電極集電箔の材料は正極と負極で異なっており,正極側には厚さ20μm程度のアルミ箔が,負極側には厚さ10μm程度の電解銅箔が使用される.そして,正極の電極集電箔には活性炭が,負極の電極集電箔には炭素材が両面塗布されて集電体として機能する.LICは図1に示すようなサンドイッチ構造を有しており,リチウムイオンは電極集電箔の孔を通じて負極にドープする. 図1 リチウムイオンキャパシタ(LIC)の構造 長岡工業高等専門学校 電気電子システム工学科 (平成29年度 一般研究開発助成 AF-2017207) 教授 中村 奨 電極集電箔に多数形成されている貫通孔の直径は,リチウムイオンのドープ時間に影響を及ぼす.そして蓄電容量および内部抵抗の改善にはドープ時間の短縮が必要とされている.そのためには,電極集電箔に形成される貫通孔をφ100μm以下にする必要があるとの知見がある.しかしながら,従来のエッチング工法では,φ100μm以下の貫通孔の形成は技術的に不可能である. このような背景の下,本研究では,レーザー加工技術を用いてLIC用電極集電箔に対して,φ100μm以下の微小孔あけ加工を施すことで,LICの蓄電容量および内部抵抗の改善を目指す.筆者らは,これまでの研究により,加工対象物の裏面(レーザビームが突き抜ける面)に高分子物質のコロイド溶液,高分子物質の溶液,または,ポリオールを接触させた状態でレーザー光を照射することにより,貫通孔の形状をコントロール可能なことを見出し,特許を取得している2).この技術を使用すれば,高額なビームローテータを使用することもなく,極めて簡便な方法でストレート孔,さらには逆テーパ孔を形成することが可能となあき電極集電箔の開発を行う.なお,高容量のLICを開発するためには,大面積の電極集電箔が必要となり,通常の加工方法では処理時間が長くなり,電極集電箔を経済的に生産することができない.本研究では,加工時間を短縮するために回折光学素子(DOE)を組み込んだレーザー加工装置を構築する.DOEとは,レーザー光を複数本に分岐することのできる特殊光学素子である.DOEを用いてビームを分岐することにより,分岐した数だけ同時に孔あけが可能となり,生産効率の飛躍的な向上が期待できる. レーザー加工システムの概略を図2に示す.本実験には,Photonics Industries International 社製のピコ秒パルスグリーンレーザー,RGH-532を使用した.レーザーの発振波長は532 nmであり,パルス周波数は100 kHz,最大出力は9 Wである.発振器より出射したレーザー光はビー ムエキスパンダでビーム径を拡大したのち,ガルバノスキャナシステムに導光し,焦点距離58.5 mmのテレセントリックfθレンズで試料表面に集光した. − 269 −次世代型蓄電デバイスの孔あき電極集電箔の開発
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