キーワード:レーザフォーミング,意匠面,角変形,加熱順序 図1 並行する加熱線 図2 並行する山折れ谷折れの一例 ている例は少ない.これは,加工法案を決定し製品を加工し終えるまでの時間が,プレス加工などに比べ格段に長く,大量生産に向いていないことが大きな原因の1つと言える.一方で,代表的な曲面成形技術であるプレス加工は,その金型が非常に高価で,少数多品種の生産には不向きである. ここで,例えば輸出用個人向け工業製品の外観を,個々の消費者特有のデザインで作成するオプションをつけることで新たな付加価値を生み出すことが出来れば,収益の拡大につなげることができると考えられる.この時,プレス加工の金型を個々の顧客ごとに作り替えたのでは,製品コストが上がりすぎて現実的ではない.もしもレーザフォーミングを用いて多様な意匠面を作り出すことができるならば,先ずプレス加工で単純な外観の基本モデルを大量生産し,次に意匠面をレーザフォーミングし,付加価値の高い製品を輸出することができるようになる.また,このようなレーザフォーミングの新しい利用分野を開拓することは,レーザ技術の発展にも寄与すると考えられる. 著者は,曲面成形に於ける幾何学的取り扱いで特許(平板加工情報の取得方法および平板加工方法 特許第4899039号)を取得しており,この方法をもとに幾何学的な加工法案を立案1),2)することが可能である.幾何学をもとに具体的な加熱法案を導くには,幅広い熱加工の知識と経験が必要となる.この段階で,造船業のぎょう鉄では熟練工の勘と経験が必要となる. 著者はこの勘と経験の部分を,加熱冷却に伴う固有ひずみの発生3),4),加熱履歴に伴う塑性ひずみの蓄積と相互作用,曲面と面内ひずみの組み合わせによる新たな角変形(折れ)の発生5),縦収縮の蓄積を利用した椀形・鞍形の作り分け,縦収縮の蓄積を利用したねじり曲面成形の高精度化6),部分加熱による新たな面内ひずみの利用など,工学の観点から曲面成形のノウハウを明らかにし,工学系技術者であれば勘や経験がなくても現象が理解できるように,加熱法案を個別の要素技術として書き下してきた.このような利用可能な技術は蓄積された状況にある. 本研究の目的は,基本的な曲面を有する製品にレーザフォーミングを付加的に行うことで,製品の外観に意匠性を持たせるために必要なレーザフォーミング技術を明らかにし,具体的にその技術を確立することにある. 1.研究の目的と背景 レーザフォーミング技術が実際に曲面成形に実用され九州工業大学 マテリアル工学科 (平成29年度 一般研究開発助成 AF-2017205) 教授 秋山 哲也 2.実験方法 2・1 供試材料 3.並行する山折れと谷折れ曲線加熱 3・1 試験片形状 板長200mm,板幅200mmの平板にレーザ移動速度6000mm/min. にて,図1に示す円弧状の加熱を行った.図中①,②は加熱順序を示し,実線は表面加熱,破線は裏面加熱の位置を示す.Model 1は内側加熱を先に,Model 2 は外側加熱を先に行う加熱である.この形状は,図2に示 実験には,加熱冷却後に硬化など材質変化の少ないオーステナイト系ステンレス鋼 SUS304(板厚 0.75mm)を用いた.所定の寸法に切り出した後,残留応力除去のための900℃ 1時間の焼鈍の後,試験片とした. 2・2 加熱条件 加熱には,出口出力1500W のレーザ加熱装置を用い,XYテーブル上の供試材を所定の加熱速度で加熱した.焦点外し距離はファイバーレーザの場合41mm でこの時のレーザ光ビーム半径は2.4mm である.YAGレーザの場合には焦点外し距離を24mmとしレーザ光ビームガウス半径をファイバーレーザ光ビーム半径と同じ2.4mmとした. す車両ボンネット部によくみられる形状を模擬している.加熱にはYAGレーザを用いた. Model 1Model 2 (a) (b) − 258 −レーザフォーミングを用いた意匠面の作成技術の開発
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