図8は,インバータモータを用いた繰返し押付け試験後のDLC膜表面にできた圧痕のSEM像である3).図6の超音波振動子を用いた試験の結果と比較すると,圧痕の形図7 (a), (b) は,約6.5 × 107 回の繰返し押付けによって損傷したDLC膜のエネルギー分散型X線分析(EDX)を行って得た,検出元素のマッピング画像である.0Vで形成したDLC膜の圧痕からは, 6.5 × 107回の試験を行ってできた圧痕からは2.0 × 107,4.3 × 107回の押付け試験後には少なかった鉄(Fe)が多く検出されていた.一方,-200Vで形成したDLC膜の圧痕からは,試験時間の増加とともにクロム(Cr)の検出が増加している.また,特に30分間の試験後の圧痕内部の一部において,Feが多く検出されている.この部分では,基板の上の皮膜が極めて薄いか,あるいは消失して基板が露出していると考えられる. 図8 インバータモータを用いた繰返し押付け試験図9 インバータモータを用いた押付け試験ででき(a) 0V (b) -200V Cr Fe (a) 0V Cr Fe (b) -200V 3・4 低周波数の繰返し押付け試験結果との比較 これまでに著者は別の研究テーマの1つとして,インバータモータを用いて運動を実現した繰返し押付け試験法の開発にも取り組んできた.そこで,今回の超音波振動子を用いた試験の結果とインバータモータによる結果とを比較した. 状自体は概ね円形であり大きな差は見受けられない.圧痕の大きさの差は,インバータモータを用いた場合は押付け回数10000回で圧痕の大きさは直径約500 µmであった.らわかっている3).このことから,皮膜の損傷に至るメカニズムが今回の2種類のDLC膜で異なるものと考えられる. バイアス電圧の違いによって特性が異なるDLC膜に対して,時間を定めて行った押付け試験でできた圧痕における元素の検出量が異なっていた.このことから,DLC膜が消失しその下にあるCr/C傾斜組成中間層やSCM415基板が露出するまでのメカニズムが異なることが推測される.0Vで形成したDLC膜の場合は低硬度であるため,球圧子の繰返し押付けにより生じた圧痕側面部分での滑り接触により摩耗が生じ,全体に皮膜が薄くなっていくものと推測される.一方,-200Vで形成したDLC膜は高硬度であるため,圧痕側面で生じる滑り接触に対しても0Vのものに比べて摩耗しにくいことが予想される.一方,滑り接触部分の表面より深い位置では,滑りに伴うせん断応力が生じる.このため,皮膜と中間層,中間層と基板の界面,さらには界面だけでなく各層内部において例えば欠陥が存在する部位からき裂が生じ,それが表面に進展した場合には皮膜のはく離となって観察されると思われる.このことにより,-200Vで形成したDLC膜においては圧痕内部におけるはく離が生じたものと考えている. 今後の改善点の1つとして,圧子して用いた球が損傷してできた粒子の圧痕上における残存量を低下させることである.圧痕の外周部分においてケイ素(Si)が検出されていたことから,圧子の球が粉砕,あるいは摩耗してできた粒子が存在していると考えられる.この理由として,ステップホーンの先端部分が細いために,たわみ,試験片面内で運動していることが考えられる.このような運動を抑制する必要がある.これを実現する手段の1つとしてステップホーンの直径を大きくして設計することを考えている.ホーンの直径は,ランジュバン型振動子のホーン接合部の直径に依存して決まるものと考えていたが,接合部の直径を振動子の直径よりも大きくして剛性を高めたホーンを現在設計,製作中である.このホーンを用いて軸方向に振幅を発生させることができれば,ホーンのたわみを抑制できると考えている. 後の圧痕のSEM像3) た圧痕の元素マッピング画像 300 μm300 μm− 256 −
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