助成研究成果報告書Vol33
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キーワード:DLC,表面疲労,超音波 図1に,開発,製作した超音波繰返し押付け試験機を示す.本研究では,1号機,2号機の2台を開発,製作したが,図1は2号機のものである.1号機は,市販のハンドプレス機(アズワン(株)製,MP-001)を改造して製作した.一方2号機は,超音波振動発生に関わるもの以外の全ての部品を自作し組み立てた.超音波振動発生のため,ボルト締めランジュバン型超音波振動子((株)富士セラミックス製,FBL28302SSF-FC)を組み付け,コントローラ((株)メステック製,ピエゾコントローラM-5107,ピエゾドライバM26109B)で動作させた. 1.研究の目的と背景 機械部品には切削加工,塑性加工,鋳造など種々の製造方法が適用されている.その中でも,近年の加工シミュレーション技術の発展や金型形状の高精度化,プレス機械の高性能化に加えて,材料の歩留まりが良好であることから,鍛造加工による機械部品の製造が進んでいる.しかしながら,加工に用いる金型においては,材料との接触面においてダレやヘタリ,割れ,疲労破壊,摩耗などといった種々の複雑な損傷が生じ1),部品の形状精度に影響を及ぼす.そのため,金型寿命の予測方法や,可能な限り金型寿命を延長することが望まれている. その方策の一つに,材料との接触部表面に対する表面改質処理がある.しかしながら,金型と材料との接触部表面は部品形状が転写されており一般に3次元的に複雑な形状をしていることが多い.そのため,接触部表面の形状精度を阻害しないようにしなければならない.また,材料と金型の接触の際には高負荷や大きな滑り速度が生じるだけでなく,焼付きや凝着摩耗といった異常摩耗が生じやすい極めて過酷な環境であるといえる.金型には,このような損傷を防止できるような表面処理方法を適用する必要がある. このような要求に対応可能性のある方法の1つに,ドライコーティング技術がある.ドライコーティングは,PVD(Physical Vapor Deposition,物理蒸着法)とCVD(Chemical Vapor Deposition,化学蒸着法)の大きく2つの手法に分けられ,いずれも高真空中において硬質皮膜を材料表面に形成するものである.ドライコーティングでは,高真空中で極めて小さな微粒子を金型表面に直接堆積させ厚さ数百nm~数µm程度の皮膜を形成する.膜厚のオーダが小さいので,金型表面形状精度を阻害しにくい.また,皮膜形成時のガス流量,真空炉内のガス圧,温度といった種々の皮膜形成条件を調整することにより,皮膜の硬さや密着性を容易に変化させることができる. ドライコーティングの中でも,近年機械部品のしゅう動部への適用などで注目されているものの1つにDLC(ダイヤモンドライクカーボン)膜がある.DLC膜は,低摩擦特性と高硬度による耐摩耗性を併せ持つという,しゅう動用高機能材料として優れた特性を有し,また硬さやヤング率といった力学的特性だけでなく電気的特性などを広範に変化させることができるということも,もう1つの特同志社大学 理工学部 機械理工学科 (平成29年度 一般研究開発助成 AF-2017037) 准教授 中村 守正 徴である2). しかしながら,DLC膜の密着性や寿命についてはまだ十分な調査が進んでいない.特に,大きな面圧が生じた状態で繰返し押付けられたり滑ったりといった極めて過酷な環境下では,適用が進んでいない.また,高面圧が生じた状態で硬質皮膜の強度を評価する方法についても検討が不十分である. そこで我々は,硬質皮膜を形成した試験片に球圧子を繰返し押付ける方法を考案し,これを繰返し押付け試験法と呼び,試験方法の確立に取り組んできた.そのうちの1つに,超音波加振を用いて極めて高い周波数で繰返し押付けを行う試験法を考案した.超音波加振を用いれば,ギガサイクルといった極めて多い繰返し回数の試験をも数時間で行うことができる. 本研究報告では,この超音波加振技術を用いた繰返し押付け試験法について,開発した試験機の詳細と,これを用いたDLC膜の評価結果について述べる. 2.実験方法 2・1 超音波繰返し押付け試験機 振動子には,振幅を拡大するためのホーンを設計,製作し,取り付けた.ホーン形状にはキャテノイダルホーン,ステップホーン,エクスポネンシャルホーンといったものが代表的に存在する.軸方向への変位を大きくしやすく,かつ加工性の観点から,本研究ではステップホーンを採用した.3次元CADソフトウェアの1つであるAUTOCADのCAE解析機能を用いて周波数解析を行うことで,ホーンの共振周波数を調べた.図2は,共振周波数28.8 kHzの時のホーンの軸方向変位の様子を示す.おおむね想定どおりの周波数において,ホーンが軸方向に大きく振動し,− 252 − 硬質皮膜のギガサイクル表面疲労強度評価法の開発 超音波加振を用いた

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