助成研究成果報告書Vol33
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キーワード:3Dプリンタ,巨大ひずみ加工,複相材料 1.研究の目的と背景 分かった.すなわち,複相材料への巨大ひずみ加工は,複相材料中の硬質粒子分布を制御することが可能である. このように複相材料中の硬質粒子の寸法や空間分布が変化した場合,複相材料の強度や延性もそれに伴って変化する.しかしながら,巨大ひずみ加工を施した複相材料の試料寸法は小さいことが多く,引張試験のような力学的性質の評価を行うことが困難である場合が多い.それゆえ,巨大ひずみ加工に伴う複相材料の力学的性質の変化を明らかにするためには,巨大ひずみ加工試料の大型化あるいはモデル材料による評価が必要となる. 近年,3Dプリンタの急速な発展に伴い,多孔質のような構造体の力学的性質の評価は,3Dプリンタで作製したモデル材料を用いて行われるようになってきた3, 4).さらに,3Dプリンタの中には,2種類の樹脂を用いてモデル材料を作製することができる機種も存在している.それゆえ,巨大ひずみ加工を施した複相材料に対するシリアルセクショニングで得られた硬質粒子分布の3次元データ(STLファイル)を用いれば,複相材料のモデル材料を硬質樹脂と軟質樹脂を一度に積層できる3Dプリンタにて作製することが可能である.さらに,このモデル材料に対して力学的性質の評価を行い,その結果に対して複合則などを適用できればAl-Al3Ti複相材料のような実際の複相材料の力学的性質を推算することが期待できる. 本研究では,軟質母相中に硬質粒子が分散した複相材料モデル材を作成可能な3Dプリンタを用いて,巨大ひずみ加工を施したAl-Al3Ti複相材料のヤング率の評価を試みた. -Al母相中に硬質な板状Al3Ti粒子が分散したAl-Al3Ti複相材料に巨大ひずみ加工を施すと,板状Al3Ti粒子が破壊し,その空間分布が変化する.過去の研究において,我々は,Al-Al3Ti複相材料に繰返押出し(ECAP)加工あるいは異周速圧延を施し,それに伴う板状Al3Ti粒子の破壊メカニズムや空間分布の変化について調査した1, 2).その際,加工前後の複相材料に対してシリアルセクショニングを行い,それによって複相材料中のAl3Ti粒子の空間分布を3次元可視化している.その結果,巨大ひずみ加工を施したAl-Al3Ti複相材料中における板状Al3Ti粒子の空間分布は,加工に伴う複相材料の塑性流動によって決定することが名古屋工業大学 大学院工学研究科 (平成29年度 一般研究開発助成 AF-2017035) 准教授 佐藤 尚 2.実験方法 2・1 Al-Al3Ti複相材料の作製と巨大ひずみ加工 供試材としてAl-5 mass%Ti合金インゴットを用いた.このインゴットを850 oCにて溶解した後に金型へ鋳込んだ.その後,作製した鋳造材より,直径10 mm × 長さ60 mmの円柱状試料を切り出し,ECAP加工用の試料とした. 本研究では,作製した円柱状Al-Al3Ti複相材料に対し,加工経路がRoute A,押出速度4 mm/minおよび加工回数4パスの条件にてECAP加工を施した.ここで,Route Aとは,円柱状試料を回転させずに一方向に押出しを続ける加工経路である.そのため,Route Aを施すと,図1に示すように圧延と同じようなせん断変形が生じる.その後,本研究では,ECAP加工を施したAl-Al3Ti複相材料に対し,光学顕微鏡観察と機械研磨を繰返し断層写真を撮影するシリアルセクショニングを行うことで,複相材料中におけるAl3Ti粒子の3次元可視化を行った.このシリアルセクショニングにおけるセクショニング間隔は約5 mである.なお,シリアルセクショニングにて撮影した断面写真を用いて,組織3次元構築ソフト(Amira 6.0)にてAl3Ti粒子の3次元構築像およびそのSTLファイルを作成した. さらに,本研究では,ECAP加工を施した試料から,15 mm × 5 mm × 1 mmのヤング率測定用の試料を切り出した. そして,共振法にて測定することができるヤング率測定装置(日本テクノプラス製,TE2-RT)にて,ECAP加工を施した複相材料のヤング率を測定した. 2・2 3Dプリンタによる複相材料モデル材料の作製 本研究では,3Dプリンタ(MUTOH社製,MF-2200D)にて複相材料のモデル材料を作製した.図2は,本研究で用いた3Dプリンタの外観写真である.本3Dプリンタは,2つの樹脂を同時に積層することができる熱溶解積層(FDM)方式のプリンタである.本研究では,複相材料における硬質粒子および軟質母相を,それぞれポリ乳酸(PLA)樹脂およびABS樹脂としてモデル材料を作製した. まず,予備実験として,3Dプリンタにて作製したモデル材料のヤング率が複合則に従うことを確認するため,図3に示す積層型複相材料を作製した.図3の断面図に示されているように,この試料のPLA層とABS層の厚さは1 mmであり,PLAが3層およびABSが2層だけ積層されている.なお,この試料の造形条件は表1の通りとした.− 242 −組織および力学的性質制御の指導原理創出 3次元組織解析技術を応用した巨大ひずみ加工複相材料における

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