図10(b), (c)に,緯方向テープの積層順序を変更した3種類のモデルによる賦形シミュレーションの結果を比較した(図10(b)における星印が最下層のテープを表している).積層順序の変更により賦形型の曲面形状部における目ずれの様子が変化していることが分かる.図10(a)における中層のテープを最下層に配置したモデルA’において,テープ基材同士の重なりも小さく,最も均一に賦形ができて謝 辞 参考文献 変形を変化させることが可能である.実際の実験による検証は実施できなかったが,模擬的に賦形シミュレーションを実施し,積層設計の自由度を用いることによる目ずれの低減について実証した. いた.これは型形状の傾斜角度と最下層テープの位置との関係によるものである.このように,賦形形状に合わせてAP-PLY積層の自由度を活用することで,基材特性と賦形性を関連づけて設計することが可能である.基材設計の自由度を活用して賦形性を制御する技術として有用である. 4.結言 本研究では,AP-PLY積層プリフォームを用いたCFRTP基材の賦形プロセスについて,実験とシミュレーションの両面から,賦形形状を設計する技術について検討した. まず,基礎物性試験(引抜き試験とせん断試験)とそのモデル化を実施し,AP-PLY積層プリフォームのメゾスケールモデルを構築した.特に,テープ基材間の摩擦係数を取得することにより,解析結果は実験結果をよく再現できることが分かった. さらに,2種類の形状の異なる賦形型を用いた賦形実験と賦形シミュレーションにより,基材に対する曲面の傾斜角度が重要な形状因子であることが分かった.また,基礎物性試験で得た材料特性を基にした賦形シミュレーションの結果は賦形実験の結果をよく模擬できていた.本研究で確立した賦形シミュレーションを活用して,賦形形状に対して賦形性(繊維配向変化など)を解析し,目ずれの生じやすい位置での形状修正に応用可能である.例えば,基材に対する傾斜角度を指標として形状設計に用いることが一例として考えられる. 上記は,基材の特性を固定して形状を設計する方法であるが,AP-PLY積層プリフォーム自体の基材設計の自由度を活用することも有用である.賦形シミュレーションにより,基材の積層順序を変更することで目ずれの低減が可能であることが明らかとなった.賦形形状から判断される目ずれの起きやすい箇所では,単に形状修正だけでなく,基材設計の自由度も活用して賦形性を制御することが重要である.本研究で確立したメゾスケールモデルを用いた賦形シミュレーションが,賦形性を基材特性や形状設計と連携させて検討するための評価ツールとして今後活用されていくことを期待する. 本研究の材料試験(引抜き試験・せん断試験)は福井県工業技術センター・川邊和正氏,山田耕平氏,岩下美和氏のご協力のもと,同センターで製作したプリプレグ材料および試験機を利用して実施した.試験に用いた治具は,木村精工(引抜き試験)・マイズ試験機(せん断試験)・井元製作所(積層用治具)に設計・製作をご協力いただいた.賦形試験に利用した空圧プレス装置はMSAファクトリーに製作いただき,本研究の賦形試験にあたり装置の調整にご協力いただいた.低コストZAS(型用亜鉛合金)を利用した賦形型は,クリモトに製作いただいた.賦形シミュレーションについては,JSOLの西正人氏にご指導いただいた.本解析は京都大学学術情報メディアセンターのスーパーコンピュータシステムを利用した.本研究課題の遂行には,大学院生の阿保勇治君・田中陽祐君にご協力いただいた.改めて関係各位に謝意を表する. 1) 高橋奈緒子: 京都大学修士論文, (2017). 2) M. H. Nagelsmit, C. Kassapoglou, Z. Gürdal: SAMPE Journal, 47-2, (2011), 36-45. J. Cao et al.: Composites A, 39, (2008), 1037-1053. 3) 4) X. Peng, J. Cao: Composites A, 36, (2005), 859-874. 5) W.-R. Yu, P. Harrison, A. Long: Composites A, 36, (2005), 1079-1093. 6) K.D. Potter: Composites, 10-3, (1979), 161-167. 7) H. Suemasu, K. Friedrich, M. Hou: Composites Manufacturing, 5-1, (1994), 31-39. 8) M. Aono, D.E. Breen, M.J. Wozny: Computer-Aided Design, 26-4, (1994), 278-292. 9) 森田早紀: 京都大学修士論文, (2015). (以下,本研究に関連する発表文献) 10) 阿保勇治, 西川雅章,岩下美和,山田耕平,川邊和正,松田直樹,北條正樹: 第43回複合材料シンポジウム講演論文集,(2018). 11) Y. Abo, Y. Tanaka, M. Nishikawa, M. Iwashita, K. Yamada, K. Kawabe, M. Nishi, N. Matsuda, M. Hojo: Proceedings of the 22nd International Conference on Composite Materials 2019(ICCM22), (2019). 12) 田中陽祐,阿保勇治,西川雅章,山田耕平,岩下美和,川邊和正,西正人,松田直樹,北條正樹: 第57回飛行機シンポジウム論文集,(2019). 13) Y. Abo, Y. Tanaka, M. Nishikawa, M. Iwashita, K. Yamada, K. Kawabe, M. Nishi, N. Matsuda, M. Hojo: Extended abstracts of the 1st Russia-Japan Joint Workshop on Composite Materials, (2019). − 223 −
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