キーワード:CFRTP,賦形,シミュレーション 自動車産業を中心に,軽量かつ高強度である熱可塑性炭素繊維複合材料を用いた構造部材の成形技術開発が盛んとなっている.自動車構造の高い生産レートへの対応や量産車適用のための低コスト化といった観点から,成形時間の短縮や低コスト化が可能である熱可塑性炭素繊維複合材料(Carbon Fiber Reinforced Thermoplastics, CFRTP)を用いたプレス成形が一つの有望な技術として期待されている.一方,炭素繊維複合材料は繊維の方向に強く,繊維で強化されていない方向には弱いという力学特性の異方性を有する.したがって,プレス成形で製作する構造の強度や信頼性を設計段階で検討する際,上記の成形において,構造形状への基材の賦形プロセスで繊維配向がいかに変化するかを評価し,成形された構造内部での繊維強化の形態を適切に把握できることが重要とされている. 炭素繊維複合材料の賦形プロセスに関して,著者らのグループでは,これまでに,液相成形を対象として,ドライ織物基材を用いた基礎試験(面内せん断特性を評価するbias-extension試験や繊維束引抜き試験など)を実施し,賦形を模擬した半球状圧子による押込み試験結果と比較した結果,繊維束滑りに関わる面内せん断特性(繊維束同士の回転摩擦抵抗)と繊維束引抜き特性(繊維束平行方向の摩擦抵抗)が経糸・緯糸間の滑りや目ずれ発生に重要であることを見出した1).このような賦形時の基材変形メカニズムに関する検討を発展させ,本研究では,熱可塑性炭素繊維プリプレグ基材を用いた賦形プロセスにおける繊維配向設計の課題に応用した. 計算機を利用したCAD(Computer Aided Design)により,応力解析や強度解析と組み合わせた部材設計が実施されるようになってきた一方,成形プロセスにおける基材の賦形解析技術と組み合わせて,賦形性に優れ,成形欠陥の生じにくい部材形状を設計する試みはあまり多くない.このような検討は,近年の賦形解析技術の進歩と,自動車構造用複合材料成形へのプレス成形技術の適用から重要性が増している研究課題である. 本研究では,CFRTP 基材として,AP-PLY 2)(Advanced Placed Ply)積層プリフォームを対象として,それを用いた賦形プロセスに関して実験と計算を併用して基礎的モデル化技術を確立するとともに,賦形対象とする構造形状の設計と基材の賦形性とを関連づける知見を得ることを目京都大学 大学院工学研究科 機械理工学専攻 (平成29年度 一般研究開発助成 AF-20017030) 准教授 西川 雅章 AP-PLY積層プリフォームは,基材設計に自由度を与える方法として,Nagelsmitら2)により提案され,自動積層技術(Automated Fiber Placement, AFP)を用いた基材の織物状積層技術として,面内特性を維持しつつ耐衝撃性を向上1.研究の目的と背景 的とした.ここでは特に大きく分けて3つの観点を踏まえて研究を遂行した. (1)熱可塑性プリプレグ基材を用いた賦形シミュレーションの検討 ドライ織物やコミングル繊維を用いた熱可塑性複合材料基材を対象として, Caoら3)を中心として,賦形シミュレーションにおける材料構成則のモデル化技術に関するベンチマーク研究が実施されてきた.特に,賦形時の変形に伴う繊維配向変化を考慮した非直交モデルによる構成則の定式化4),5)は多数の研究者によりモデル化されており,現在では汎用有限要素法ソフトにも導入され,標準的な方法論が確立しつつある. 一方,プレス成形などを対象としたプリプレグ基材の賦形性には基材間摩擦が重要である.このような特性を実験的に計測したうえで,賦形シミュレーションを検討している研究例はまだ少ない. (2)炭素繊維複合材料構造の賦形形状と賦形性の関係についての評価 賦形形状に対する繊維配向の予測として,古くは,Potterら6)やSuemasuら7)による幾何学的な理論解析があるが,実際には基材間摩擦等の材料特性が賦形時に重要となるため,理論解析は繊維配向変化の範囲や傾向を大まかに予測するための方法である.また,賦形形状の影響を考慮するために,NURBS(Non-Uniform Rational B-Spline)曲面を利用した検討例8)もあるが,幾何形状に対して基材の変形特性や変形のメカニズムを考慮しながら検討しようとする試みは少ない. (3)基材設計の自由度を活用して賦形性を制御する方法の検討 する手法として紹介されている.この積層基材は,賦形性の観点からも基材設計に自由度を与える手法として着目されている. 本研究では,このAP-PLY積層基材の設計自由度を賦形性に応用する方法についても,賦形シミュレーションを利用して基礎的検討を行った. − 218 −熱可塑性炭素繊維複合材料の成形における 賦形形状設計技術の研究
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