キーワード:薄板金属成型,接触条件,超音波,FDTD,可視化 R 22 表1に各材質の音響インピーダンスと,媒質1を金型と ρは媒質の密度,clは媒質内の縦波音速である. 図1に示すように超音波探触子より媒質1に入射された超音波は,材質の異なる媒質1および媒質2の境界面で透過波と反射波に分離する. 図1 異なる媒質の境界面における超音波の反射と透過 Z1Z1表1 音響インピーダンスと音圧反射率 ZZ Z = ρ×cl 1. 緒言 プレス加工において,加工中に生じる隙間をセンサにより検出し,サーボ機構にフィードバックさせて金型のモーションやスライド下死点を制御すれば,ネットシェイプ加工が可能となるだけでなく,機械を停止せずに調整が行え,全自動プレス加工システムの実現が期待される.また,数値シミュレーションによる変形解析が多くなされているが,製品形状は金型が開いた加工終了後でなければ確認することができない.解析精度を向上させるためには,加工中の製品形状を把握し,その結果を解析に反映させるシステムが求められる. そこで,著者らは超音波を用いてプレス加工中の被加工材と金型の接触状態をインプロセスで計測するシステムの開発を行っている1)~10).この手法は,異なる材質の境界面で超音波が反射する性質を利用している1),11). 従来の研究で,平行金型やV字型金型を用いた実験および超音波伝播シミュレーションにより被加工材の材質,厚さと金型形状に超音波の反射・特性が影響されることが分かっている.一般的に使用される垂直探触子から入射される超音波は縦波であるが,入射波が金型と被加工材の境界面に斜め入射すると縦波と横波に分かれ,接触面付近の音場は複雑となる.したがって,インプロセス計測の精度向上には縦波・横波の伝播特性を詳しく調べることが必要である.縦波の波面は進行方向に対して平行に変動し,その変動によって垂直応力が発生する.一方,横波は進行方向に対して垂直に変動し,せん断応力が生じる.そのため縦波・横波の伝播は,それぞれ垂直応力,せん断応力を用いてある程度調べることは可能である.しかし,例えば縦波の振幅の分布が一様でない場合,その不均一によってせん断応力が生じる.そのため,たとえ入射波が縦波のみであったとしても,せん断応力が生じる.よって応力分布のみで縦波,横波を分離して調べることは困難である. 弾性波の基礎式に,速度ベクトルより定義されるスカラおよびベクトル速度ポテンシャルを用いることにより,それぞれ独立に縦波と横波の波動方程式を満たすことが知られている10)~12).したがって,速度ポテンシャルを用いれば,縦波,横波の伝播をより詳細に調べることができる. 本研究では,速度ポテンシャルを金型内の超音波の伝播解析を用いることにより,円弧金型における超音波伝播を調べた.数値解析手法には主に電磁波の伝播に用いられる有限差分時間領域法(Finite difference time domain method,以下FDTD法)5)~9),14),15)を使用し,金型内の超音波音場の可視化および波高比の予測技術の開発を行った. 神奈川工科大学 自動車システム開発工学科 (平成29年度 一般研究開発助成 AF-2017029) 助教 小宮 聖司 2. 計測原理 SteelAirStainlesssteelCopperAluminiumこの境界面における超音波の反射率は音圧反射率と呼ばれ,縦波平面波がその波面に平行な面に入射する場合,式(1)で表される1),11). ここで,Z1およびZ2は媒質1および2の音響インピーダンスであり式(2)で与えられる. したときの反射率を示す.金属と空気の接触面においては,表1に示す様に音圧反射率はほぼ1となる.そのため金型と被加工材の間に隙間が生じている場合,その隙間の空気と金型の境界面では超音波がほぼ全反射し反射波が増加する.一方,透過波は減少する. 薄板V曲げ加工を例に,超音波を用いて接触状態を調べる手法の概要を図2に示す.金型と被加工材が密着し,隙間がなくなると,超音波の反射量が減少し透過量が増加する.この反射波および透過波を計測することにより,接触状態の変化を調べることができる. Acoustic impedance Z[×106 kg/(m2s)]46.4 0.0004 45.7 42.2 17.5 (1) (2) Sound pressure reflectance (material 1 is steel) R0.01.00.0080.0470.452− 213 −プレス加工中の金型内部の材料挙動の可視化
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