ボールと粉末の重量比は25 : 1とした.また,本研究では潤滑剤として4 mass.%のステアリン酸を同時に投入した.粉砕容器は,SUS製の雰囲気制御容器内に収め,ロータリーポンプにより真空引き後,高純度N2ガスを導入し雰囲ガス圧力が0.7 MPaとなるように調整した.MA処理には,Fritsch社製の遊星型ボールミルP-5を用い,公転回転数400 rpmにてMA処理を行った.複数回のMA処理を与える際には,粉末をポッドから一度回収した後,同じ手順を繰り返し行った. 1.研究の目的と背景 キーワード:窒化チタンアルミニウム,メカニカルアロイング,放電プラズマ焼結 炭化タングステン-コバルト(WC-Co)系超硬合金は,硬度・靭性など工具に必要とされる性能を高いレベルで併せもつ事より,現在なお,最も使用される工具材料となっている.しかし一方で,さらなる生産性向上やレアメタル問題の観点より,将来に向けて,このWC-Coの代替となる工具の開発は必須の課題である.このような代替材料の開発として,炭窒化チタン(Ti(C,N))や立方晶窒化ホウ素(c-BN)などを基材としたサーメット工具材料に関する研究が数多くなされてきている.しかしながら,これまでに代替となりえるほどには生産量は伸びていない. このWC-Coの代替材料開発という課題に対して著者らは,窒化チタンアルミニウム((Ti,Al)N)系サーメット材料の開発を考えた.(Ti,Al)Nは,高硬度であると同時に優れた耐酸化性を有する材料であり,特に炭素鋼の高速切削に対して優れた切削性能を示すことより,切削工具等への耐摩耗性コーティングとして最も利用される材料となっている.その優れた特性をバルク体として利用することを目的として,これまでに(Ti,Al)Nの焼結体作製については数多くの研究がなされてきたが,(Ti,Al)Nは標準自由生成エネルギーの高さから粉末合成自体が難しく,未だその作製には至っていない.しかしながら,仮に(Ti,Al)Nをバルク体化できるようになれば,これを基材とすることにより,WC-Coの代替となり得るサーメット工具材料の開発が可能ではないかと考えられる. これまでに著者らは,メカニカルアロイング(MA)法と放電プラズマ焼結(SPS)法を組み合わせることにより,一般的に作製が困難とされる窒化チタン(TiN)や窒化クロム(CrN)の焼結体作製が比較的簡単にできることを明らかにしてきた1,2).一方,これまでにMikiらにより,Ti粉末とAl粉末をN2ガス雰囲気下においてMA処理を行うと,TiおよびAlはNを吸収し(Ti,Al)N相を形成することが報告されている3,4).本研究では,この著者らの知見を基に,MA法とSPS法を組み合わせた(Ti,Al)N焼結体の作製および(Ti,Al)N系サーメットの作製に関する研究を行った.特に今回は,(Ti,Al)N焼結体作製に関する研究成果に関して報告をする. 2.実験方法 原料粉末には, 市販のTi-Al粉末((株)高純度化学研究所化学, 質量比65 : 35)を用いた.原料粉末は,粉砕ボール(WC-Co製.φ15 mm)とともに粉砕容器(WC-Co製,45 cm3)中に投入した.この時,苫小牧工業高等専門学校 創造工学科 機械系 (平成29年度 一般研究開発助成 AF-2017027) 准教授 浅見 廣樹 SPS法による粉末の焼結には,(株)シンターランド製LABOX-125を用いた.試料充填部は,φ40(φ15.4)×30 mmの黒鉛ダイおよびφ20×25 mmの黒鉛パンチにより構成し,黒鉛ダイ中への粉末充填量は5.0 gとした. また離型のために,黒鉛型と黒鉛パンチの隙間および黒鉛パンチと試料粉末の間には, 厚さ0.2 mmの黒鉛シートを挟んだ.焼結時は,まずチャンバー内を10 Pa以下まで真空排気し,加圧力が50 MPaとなるように負荷を調整した.その後,直流パルス電流を印加して約80 ºC/minで昇温させ,ラムの変位挙動において焼結による体積収縮が完了し熱膨張に転じたと考えられる温度にて10 min保持した.保持時間の終了後に通電・加圧を止め,チャンバー内にN2ガスを流入し600 °C以下となるまで150 °C/min 以上の速度で冷却させた. 合成した粉末と焼結体の結晶相同定には,X線回折装置(XRD, BRUKER製, New D8 ADVANCE)を用いた.XRDは,入射X線として波長λ = 0.15418 nmのCuK線を使用し,管電圧40 kV,管電流40 mA,スキャンステップ幅0.01 °でθ/2θ法により結晶相を同定した.焼結体の組織観察には,走査型電子顕微鏡(SEM,JEOL製,JCM5100LA)を使用し,加速電圧20 kVで観察を行った.焼結体の硬さ測定は, ビッカース硬度計(明石製作所,AVK)を用いて行った.硬さ測定では,7回測定した値について,最大値と最小値を除いた5回の平均値を硬さとした.測定時の押し込み荷重は98 Nとし,荷重保持時間を10 sとして測定した.また,硬さ測定の際に圧痕に生じたクラック長より,式(1)を用いて破壊靭性値KIcを評価した5).式中においてaはビッカース圧痕の平均対角線長さの半分,cは圧痕中央からクラック先端までの長さ,HVはビッカース硬さを示す. KIc = 0.203(c/a)-3/2HVa1/2 …(1) − 201 −MA-SPSプロセスを用いた(Ti,Al)N系高耐摩耗性材料の創成
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