助成研究成果報告書Vol33
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2 キーワード:深絞り,対向液圧,アルミニウム,溶体化,部分軟化 2・2 部分軟化熱処理方法 表2 A6061合金板の機械的特性値 表1 A6061合金板の化学成分( wt%) 1.研究の目的と背景 (平成29年度 一般研究開発助成 AF-2017025) アルミニウム合金板は鋼板に比べて深絞り性に劣っており,深い容器形状の製品を慣用のプレス加工法で成形することは難しい.そのため,成形性を向上させる技術として,対向液圧成形法1)や部分軟化成形法2)などの特殊加工法が開発されている.対向液圧成形法は,1工程の成形で深い容器形状部品を得ることができる.しかしながら,液体を使った特殊な金型を使用するため,再絞りなどの多工程の加工が難しく,1工程でさらに複雑な成形を行うことが望まれている.一方,部分軟化成形法としては,これまでにもブランクの周辺部を焼鈍することで軟化させる周辺軟化成形法3)や中央部を時効処理によって硬化させる中央硬化成形法4)が提案されている.また,レーザーによる走査型の熱処理よって,アルミニウム合金板に強度分布を与える方法は,Tailored Heat Treated Blanks(THTB)として研究されている5).しかしながら部分軟化成形法の成形性は,軟質部の強度差に依存するため,更に成形性を向上させることは難しい. そこで,アルミニウム合金板の成形性を更に向上させるために両者の成形法の組み合わせを試みる.部分軟化成形法は,他の特殊加工法と異なり,成形前の素材の改質技術である.そのため,加工に関しては慣用のプレス加工法に限定されない.対向液圧成形法とも組み合わせられる可能性があり,両者の組み合わせによって,深絞り性が向上することが,成形シミュレーションにおいては報告されている6).しかしながら,実験的に検証された報告はなく,対向液圧成形のような高い絞り比での成形において,本当に成形性が向上するかどうか明らかになっていない.本論文では,部分軟化成形法と対向液圧成形法を組み合わせ,円筒深絞り試験を行って成形限界を調べたので報告する. 2.実験方法 2・1 供試材 部分的に軟化した板を作製するため,人工時効処理した硬質なアルミニウム合金板に局所的な溶体化を施すこととし,供試材として熱処理型合金のA6061-T6板を用いた.表1に化学成分を示す. 大同大学 機械工学科 教授 西脇 武志 また,表2に硬質材(T6)と溶体化した軟質材(W)の機械的特性値を示す.溶体化処理については,後述する方法で全域を溶体化した後,JIS5号試験片に加工を施し,引張試験を行った. 局所溶体化処理の方法として,高温に加熱した金型との接触熱伝達により供試材を加熱し,溶体化処理する方法を用いた.局所溶体化処理装置の概略図を図1に示す.加熱金型には円形溝加工を施し,中央部が加熱されず,フランジ周辺部のみ加熱されるようにした.局所溶体化処理する際は,加熱金型の中央部の表面温度が500℃になるように加熱し,供試材を挟み込んで,25kNで0.9秒間加圧保持した.その後,除圧し直ちに水冷した. 加熱金型は,円形溝の直径寸法■■■が異なるものを用意した.成形工程で使用するパンチ径■■と円形溝の直径寸法■■■の比率■■■/■■が,1.2,1.4,1.6,1.8となるような円した.以後,この比率を硬質領域比(■■■/■■)と称する.■■■=φ39.6 ~ 52.8 形溝加工を施した加熱金型と,円形溝無しの5種類を使用硬質領域比は,その数字が大きくなるほど,局所溶体化処理後の硬質領域が広くなることを意味している. カートリッジ ヒータ 供試材 加熱金型 部分軟化熱処理後の硬さ分布を図2に示す.硬質領域比が異なる加熱金型を用いて熱処理したブランクは,硬さ分布が異なっており,軟化領域の作り分けができている.ま熱板 図1 局所溶体化熱処理装置の概要 125 Si 0.63 Fe 0.3 Cu Mn Mg 0.27 0.06 1.0 Cr Ti 0.18 0.06 0.03 A6061-T6 A6061-W Zn YS /MPa TS /MPa 伸び / % 292 99 315 188 10.6 20.3 円形溝 − 193 −部分軟化熱処理を施したアルミニウム合金板の対向液圧成形

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