(2)アルミニウム粉末の状態が積層に及ぼす影響 乾燥状態,未乾燥状態のアルミニウム粉末で1層だけ厚さ200 mで造形し,その造形状態を観察する.ベースプレートは30 mm (L) ×19 mm (W) × 4 mm (T)のアルミニウム板とした. (3)敷設厚さの違いによる造形状態への影響 最適な状態のアルミニウム粉末を用いて,積層厚さを約0.1 mm,0.2 mm,0.5 mmの3種類で積層造形する.作製したサンプルをファインカッタで組織観察用と硬さ試験 表表4 アルミニウム合⾦(Al10SiMg)の機械的特性 破断ひずみ % 積層まま材 積層後圧延材 市販材(参考) 表層 図図3 積層まま材と積層後圧延材のビッカース硬さ分布(チタン合⾦) 図図4 光学顕微鏡による内部組織観察 チタン合金板の引張り強さに関しては,圧延による加工硬化は認められず,圧延前後でほぼ同じ引張り強さを示している.一方,比較のアルミニウム合金板は,積層造形まま材の引張り強さが高い結果となっている.また,マルエージング鋼板の場合は加工硬化し,圧延加工後の引張強さが向上している.市販されているチタン合金(Ti64)の板材の引張り強さは1000 MPa程度であるため,本プロセスで製造した板材の方が,引張り強さが高い結果となった.チタン合金板の延性については,圧延加工を施すことによって,延性が向上する結果を示した.アルミニウム合金板の結果も同様の傾向を示している. チタン合金板のビッカース硬度の結果を図図3に示す.硬さ試験結果では,圧延前後の板材であまり差がない結果を示しており,引張り試験結果と一致している.内部組織観察結果を図図4に示す.図中の細い矢印は積層方向を示す.内部組織観察の結果に着目すると,針状の微細な結晶組織が確認できる.アルミニウム合金やマルエージング鋼で観察されたうろこ状の模様3),4)は明確には確認できなかった. さ 硬 ス ー カ ッ ビ 400380360340320300うろこ状の模様は,レーザ照射による溶融・凝固が繰り返された結果と考えられる.チタン合金の場合もうろこ状の模様を示すと予想されたが,凝固後の固相変態により,うろこ状模様が不明瞭になったと考えられる.図4に示す太い矢印において,微かであるが,うろこ状模様と考えられる痕跡が観察される.一方,針状の組織や,うろこ状模様の痕跡は圧延後には全く観察されず,圧延加工により内部組織が大きく変化していることが観察できる.アルキメデス法による密度計算では,圧延前の板材で4.35 g/cm3となり,圧延後の板材で4.33 g/cm3となった.EOSで用いられているチタン合金粉末の密度は4.41 g/cm3と報告されているため,圧延前後の板材の緻密度は98.6%,および98.2%になる.両方の材料共に十分に緻密度が高い材料と考えられる. 引張り強さ T MPa 18.9 5.3 2 1168 1819 1240 (a)積層まま材 積層まま材 積層後圧延材 中⼼ 表層 (b) 積層後圧延材 板厚3.5mm 1.4 考察 積層造形物は温度変化が急激なため,微細な結晶組織を有している.本実験で積層造形したチタン合金も,微細結晶粒の影響を受け,引張り試験結果では,通常のチタン合金よりも積層造形まま材は非常に高い引張り強さを示し,延性も高い値を示している.圧延加工後は引張強度がほぼ変化せずに延性が向上する結果となった. 微細結晶粒では変形の要因として粒界すべりが占める割合が多くなり,転移に起因する変形の割合は減少する5).粒界すべりでは加工硬化はあまり生じない5).一方で延性が向上する材料があることが報告されている6).本実験のチタン合金板も積層造形のため微細結晶粒組織となり,圧延加工による塑性変形は主に粒界すべりに起因したため,引張り強さが変化せずに,延性が向上する現象を示したと考えられる. 1.5 まとめ 積層造形したチタン合金(Ti64)に対して圧延加工を施すことによる機械的性質の変化を検討した.引張り強さに関しては,圧延加工による影響は小さく,圧延前後での変化は認められなかった.その一方,延性が向上する結果となった.これは,積層造形による微細結晶粒が主な要因であると考えられる. 2.粉末を使用した板材の積層と圧縮試験 2.1 実験の目的 金属積層造形での造形物は,金属粉を数百ⅿの厚さで積層し,ファイバーレーザなどで溶融し,凝固させ何層も積み上げていくことで成形している.従来の連鋳などの加工法の内部組織とは大きく異なると考えられる.さらに,圧延などの外部からの力を加えることで積層造形物の特性を変化させる可能性があり,従来より優れた部材を作製することが期待できる.本研究では,積層造形と圧延を組合せた加工プロセスの開発を目指し,積層造形と圧延を連続で実施できる装置の開発のため,金属粉末を使用した場合の積層造形による板材作製と,作製した板材に塑性変形を加えることによる板材の特性変化に焦点をあてた. 2.2実験方法 (1)ファイバーレーザによる溶融状態の確認 ステンレス板にファイバーレーザを様々な条件で照射し,ステンレス板の溶融凝固状態を観察する.ファイバーレーザはIPG製を使用した.表表5にレーザの仕様を示す.照射条件はレーザ出力200 W,周波数1000 Hz,パルス幅5×10-5 s,走査速度は200 mm/s,50 mm/s,10 mm/sの場合を比較した.次に走査速度50 mm/sで固定し,レーザ出力を200 W,300 W,400 Wと変化させ,周波数1000 HzにおけるDuty比と穴の深さの関係を検討した. レーザ装置 レーザ仕様 スポット径 直径:120 m 焦点距離 − 172 −表表5 レーザの仕様 YLR-150/1500-QCW-AC Yファイバーレーザ:波長1070 nm 130 mm
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