助成研究成果報告書Vol33
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図1 高温圧縮試験の概略図 超塑性加工を用いた生体吸収性セラミック医療用デバイスの成形 キーワード:ハイドロキシアパタイト,超塑性加工,後方押出試験,相変態 1.研究の目的と背景 調査するために途中止め試験を行った.途中止め試験の試験温度は1100 ºC,クロスヘッドスピードは0.05 mm/minで行った. 2・3 後方押出試験 医療用デバイスの筐体を想定した円筒形状の成形体を10 ºC/minの速度で最高温度まで上昇させ,設定時間保持後,4.2 ºC/minの速度で炉冷することで焼結を行った.そして,焼結体は密度測定と粒径測定を行った.密度測定はアルキメデス法,粒径測定にはSEM観察から得られた写真にHyde法を用いた. 2・2 高温圧縮試験 CIPを施し最高焼結温度1200 ºCで2時間保持したHA試験片に対して高温圧縮試験を行った.圧縮用試験片は高さ5 mm,幅5 mm,厚さ2 mmとなるように研削し切断した.試験片を設置した後,試験温度である1050 ºC,1100 ºC,1150 ºCまで50 ºC/minで温度上昇させ試験中保持し,クロスヘッドスピード0.5 mm/min,0.05 mm/min,0.005 mm/minで圧縮を行った.また,結晶粒径が大きい試験片として焼結温度を1250 ºCに変更して作製した試験片に対して,試験温度1150 ºCでクロスヘッドスピード0.05 mm/minの条件で圧縮試験を行った. 試験には図1に示すように炉を取り付けた万能試験機 (SHIMADZU AG-100kNG) を用いた.圧縮治具はZrO2,試験片と接する部分にSiCを用いた.試験片が均一に変形していると仮定して荷重-変位曲線から真応力-真ひずみ曲線を算出した.また,ひずみ毎に粒径と密度の変化をHA粉末(HAP-200,太平化学産業)15 gを100 MPa,1分間保持の条件で一軸プレスにより直方体に圧粉した.さらに粒成長を抑え密度を向上させるために冷間静水圧プレス(Cold Isostatic Pressing: CIP)で200 MPa,1分間保持の条件で等方的に加圧成形した.圧粉体は電気炉にて現在,世界中で高齢化が進み,様々な病気に罹患する人々が増えてきている.病気の治療のために薬を使用する際,経口投与が主であるが,実際に患部まで到達し効果を発揮するのはわずかな量である場合が多い.また,薬の成分の中には生体内で速やかに分解されて効力がなくなるものや,必要のない部位に作用し副作用を引き起こすものがある.これらの問題を解決するため,直接患部に薬を充填したデバイスを配置することで,薬の量や投与回数を適切に調節し,本来の効用を発揮させ副作用を軽減させる方法が望まれる.また,患者のクオリティ・オブ・ライフの向上のために,治療時になるべく負担をかけない配慮が必要である.そのため,治癒後に取り出さず体内で吸収されるデバイスが期待される. 本研究では,医療用デバイスに用いる材料として生体材料の中でも生体親和性に優れたリン酸カルシウム系セラミックスに注目した.生体内で異物反応を示さないリン酸カルシウム系材料であるリン酸三カルシウム(Tricalcium phosphate:TCP)は生体吸収性を有すが,脆性材料であるため切削加工しにくいという欠点がある.そこで,超塑性現象を示すことが知られている同じリン酸カルシウム系材料であるハイドロキシアパタイト(Hydroxyapatite:HA)であれば,この現象を利用し製品加工の自由度を高くすることが可能になる1).HAの超塑性特性に関する研究は引張による評価が多く,実際の加工時に負荷される圧縮によるものが非常に少ない.また,HAは1300 ºC以上でTCPへ相変態することが知られている2).したがって,超塑性を用いて複雑な加工を施したHAをTCPへ相変態させることにより,体内で吸収可能な医療用デバイスが成形できると考えた. そこで,本研究ではHAの高温圧縮条件下での塑性変形および熱処理によるTCPへの相変態を調査することを目的とした. 2.実験方法 2・1 試験片作製 首都大学東京(現東京都立大学) 機械システム工学科 (平成29年度 一般研究開発助成 AF-2017019) 教授 小林 訓史 − 167 −

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