助成研究成果報告書Vol33
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キーワード:微粒子投射,プレス金型,硬質薄膜,熱劣化,表面強度 2.実験方法 1.研究の目的と背景 図1 試験片の概要 近年,自動車業界では,衝突安全性と車体の軽量化が要求され,より比強度の高い部材として超高張力鋼板が多く用いられている.この超高張力鋼板の加工法として,ホットスタンピングが用いられている.このホットスタンピングは,プレス前に鋼板を加熱して成形しやすくし,プレス時に金型内で急冷することにより鋼板の焼入れを可能にしている1).そのため,ホットスタンピングで用いられる金型は,冷間プレス金型と違い高温に曝されることになり,その環境でも長寿命になる新たな硬質薄膜の開発が進められている.そこで,ホットスタンピングに即した硬質薄膜の熱劣化試験法と熱劣化した硬質薄膜の表面強度評価法が求められている. 硬質薄膜の表面強度評価法として,岩井と松原らは,微小な固体粒子を含有したスラリーを圧縮空気で高速で投射し,硬質薄膜に微小なエロージョンを進行させることで,深さ方向のエロージョンの進行度合いから評価するマイクロ・スラリージェット・エロージョン(以下,MSE と表記)法 2),3)を開発・提案している.この方法では,膜単体の強さを表面から内部の深さ方向に対して詳細に評価できることを明らかにしている. 本研究室では,このMSE 法について研究をするとともに,投射粒子に50 µm以上の球形粒子を用いる微粒子エロージョン法についても研究を進めている.これは,粒子衝突による深さ方向および面方向の衝突エネルギーを大きくして,繰り返し衝撃を与え,硬質薄膜の損傷の面方向の広がり方を評価することで,MSE 法とは異なる特性を新たに評価できる可能性を示唆している4),5). そこで本研究では,プレス金型用硬質薄膜の熱劣化法を新たに構築すること,その手法によって熱劣化させた硬質薄膜の膜質の変化をMSE試験によって評価すること,硬質薄膜界面の耐剥離性を微粒子エロージョン試験によって評価することで,熱劣化させたプレス金型用硬質薄膜の新しい表面強度評価法を提案する. 2・1 供試材料 本研究で使用した試験片の概要を図1に示す.熱間工具鋼を基材とし,PVD法で表面に5層の硬質薄膜が成膜された硬質薄膜被覆鋼材試験片を用いた.試験片の寸法は40富山県立大学 工学部 機械システム工学科 (平成29年度 一般研究開発助成 AF-2017016) 准教授 宮島 敏郎 ×40 mm,厚さ10 mmとした.簡易膜厚測定器(カロテスト)で計測した各硬質薄膜の膜厚は,最表層の1層目から順に,6.5 µm,2.0 µm,5.2 µm,1.5 µm,0.1 µmであった.本研究では,この5層のうち,最表層の1層目に焦点を当て,硬質薄膜の評価を行った. 2・2 熱劣化試験 本研究で製作した熱劣化試験機の概要を図2に示す.ホットスタンピング用金型のように加熱・冷却の熱負荷サイクルが実施できるように,試験片表層に,加熱と空冷を繰り返し負荷できるような仕様とした.加熱はホットプレートによる接触加熱とし,空冷はファンにより間接冷却とした.装置の内部には,上部に接触加熱用のホットプレートと空冷用のファンがそれぞれ取り付けられており,その下を,試験片を載せた試料台が水平方向と垂直方向に動く仕組みとした.これにより,試験片を載せた試料台はホットプレートと空冷ファンのそれぞれの直下を移動できる機構になっている.また,試験機の制御画面から,ホットプレートによる接触加熱時間と,ファンによる空冷時間を設定できるようにした.また,ホットプレートと空冷ファンのそれぞれの直下を移動するサイクル数も設定し,接触加熱とファンによる空冷を行うサイクルを任意の回数にすることができるようにした. なお,試験片を設置する試料台には,試験片の下部から試験片を冷却させるための水循環水路を設け,試験片は実金型のように試験片の上側(硬質薄膜側)が加熱され,試験片下側(基材側)は冷却される状態にした. − 152 −表面から熱劣化したプレス金型用硬質薄膜の 微粒子投射による表面強度評価法の開発

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