助成研究成果報告書Vol33
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キーワード:チタン,超弾性,展開構造 る[3].しかし既往研究での溶体化処理では,母材部で再結晶集合組織が発達し超弾性の等方性を妨げる問題があっ Fig. 2に行った3段階の熱処理と組織のフローチャートを示す.いずれも熱処理後は水中に焼き入れ急冷した.母材部においては,受入材に直接800℃-10分の焼鈍を施しα/β相率および変態温度を調整する事で超弾性が発現するが,本研究では溶接部への適用を考慮し,溶体化処理を 我々はSP-700に溶接部含め超弾性を付与する最適な熱処理条件として,溶接組織の初期化に必要な溶体化,変態温度を調整し超弾性を発現するのに必要な焼鈍の2段階について検討を行ってきた.溶接部においては溶接後の緩1.研究の目的と背景 Ti-4.5Al-3V-2Fe-2Mo合金(SP-700)は優れた冷間加工性と溶接性,超塑性特性から宇宙機の燃料タンク等,宇宙工学分野で広く用いられている [1]. 我々は,焼鈍処理を施したSP-700に,材料が応力誘起マルテンサイト変態を介し数%を超える可逆変形を示す特性である超弾性の発現を報告した[2].Ni-Ti合金等の一般的な形状記憶・超弾性材料が主に線材であるのに対し,SP-700では大型板材が流通しており,超弾性構造部材に加工することが可能である.従ってSP-700の超弾性の研究により超弾性の工学的応用の幅が大きく広がり,宇宙開発への貢献が期待できる. 宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所(ISAS/JAXA)では,その一つとして超弾性変形を利用した,折り畳み可能な上段ロケット展開ノズルが検討されている(Fig. 1).この機構への応用の実現には,溶接部も含め折り畳みに伴う超弾性が必要である. Fig.1 上段ロケット展開ノズル やかな冷却によりβ相粒界に粗大α相が発達して延性の消失が確認されるが,溶体化処理を行う事で延性は回復すた.この為,母材部の超弾性の異方性を抑制しつつ,溶接部に超弾性を発現させる熱処理の確立が要求された. そこで本研究では,まず溶体化前の焼鈍処理で転位密度を回復し,溶体化時の再結晶抑制を試みた.さらに溶体化材の変態温度を焼鈍・時効処理により調整する事で,同一熱処理による母材部・溶接部両方の超弾性発現を試みた.最終的に,実物大ノズルを試作して,よりその実現性を示した[4]. 2.研究方法 SP-700冷間圧延材(母材)に対するTIG溶接でのビードオンプレート法,マイクロプラズマを用いた突き合せ溶接の2種類の溶接で溶接部を作製し,溶接まま材とした.母材及び溶接まま材を試験片とし,各々に同様の熱処理を施し機械試験・微細組織観察を行った.ここで溶接材の引張用試料は,TIG溶接材ではゲージ部が全て溶接組織となるように,マイクロプラズマ溶接材では溶接線がゲージ部と垂直かつ引張方向と垂直になるようにした. 初めに焼鈍の有無と10分間溶体化からなる熱処理条件を設定し,母材部加工集合組織の保持を試みた.溶体化の後にα/β相率調整とω時効を行い,超弾性発現を試みた.機械試験はRD, RDから45°(以下45°方向), TDの三方向に対し引張負荷・除荷をひずみ3 %で行い,超弾性とその異方性を調べた.組織観察にはSEM,XRDを用いた. 最後にSP-700超弾性ノズルの実現性を示すため,SP-700板材ロケットノズル延長部の実物大模型を試作し折り畳み・展開試験を実施した. 3.1 母材部の多段階熱処理と機械試験 含む熱処理条件の検討を行った.前段の熱処理如何に関わらず,α相が完全に消滅する900℃以上で溶体化すると再結晶が生じてしまった.そこで溶体化をα相が消え切らな宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究所 (平成29年度 一般研究開発助成 AF-2017014) 教授 佐藤 英一 3.研究結果 − 144 −超塑性成形によるSP-700チタン合金薄板の「超弾性」特性改善と、 一体型展開構造物への適用

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