キーワード:加工硬化,機械的特性,硬さ試験 (2) ハーバート硬さ試験機 ハーバート硬さ試験機の写真を図2(a)に示す.試験機1.研究の目的と背景 (平成29年度 一般研究開発助成 AF-2017012) ハーバート硬さ試験機は振り子型硬さ試験機のひとつである1).ハーバート硬さ試験機はドリルやフライスといった工具の刃先の硬さを測定することができる.このようなことは,通常の押込型硬さ試験機や反発型硬さ試験機では不可能である.ハーバート硬さ試験機で測定される硬さは次の3種類に大別される. 1) 振り子をある一定角度片側に傾けて,反対側にどれだけ振れるかで示される目盛硬さ 2) 振り子が10回揺動するのに要した時間で示される時間硬さ 3) 目盛硬さと時間硬さの比で表される流動硬さ ハーバート硬さにより,鉛からサファイヤまでの広範囲の材料に対する硬さ測定が可能であるが,この硬さ試験機には次の欠点があった. 1) 目盛硬さ評価のために,水準器内の泡の位置の目盛を目視によって読み取らねばならない. 2) 時間硬さ評価のために計時する必要がある. 3) 流動硬さを直接測定することはできない. これらの欠点を克服するために,振り子の揺動運動をレーザ変位計により測定できるように改良された2).これにより硬さ試験機の揺動運動を電気信号で測定でき,データをコンピュータに取り込むことが可能となった. ハーバート硬さ試験機の揺動運動は,自由減衰振動として捉えられる.自由減衰曲線から得られる減衰定数αは高硬度の人工サファイヤから比較的軟らかい高分子材料まで,流動硬さとの間に非常によい相関が見られる2).流動硬さと等価なものと見なすことが可能な減衰定数を,減衰硬さと定義し新たな材料硬さの指標が得られた.押込硬さや反発硬さでは硬さ測定が困難な人工サファイヤなどの非常に硬い材料から軟らかい高分子材料までの硬さを減衰硬さにより一貫した表示が可能になると考えられる. ビッカース硬さに代表される既存の硬さは単調負荷に対する材料の変形抵抗であるのに対して,ハーバート硬さは繰り返し負荷に対する材料の変形抵抗を示すものと考えられる.Herbert1)はこの考えに基づき,特に流動硬さは金属材料の加工硬化特性と関係があることを示している.既存硬さでは降伏強度や引張強度といった強度特性との関係が示されているが,加工硬化特性との明瞭な関係はないものと考えられる.一方,おおよそ減衰硬さとひずみ群馬大学大学院 理工学府 助教 鈴木 良祐 硬化指数との間には相関関係がある3).素材の制限等により引張試験を行うことが難しい材料に対して塑性加工にとって有用な情報である加工硬化特性をハーバート硬さ試験による減衰硬さから予測できる可能性がある.本研究では減衰硬さよりばらつきの少ない角速度を用いて加工硬化特性の予測可能性について検討することを目的とする. 2.実験方法 2・1 実験装置の概要 (1) 引張試験装置 引張試験の模式図を図1に示す.試験には万能試験機(島津製作所製:Universal Testing Machine UH-100KNA)を用いた.万能試験機から出力される荷重の電気信号はデータロガー(GRAPHTEC製GL200)で記録される.試験片の伸びは標準軸方向のび計(Epsilon社製:Extensometer 3542-050M-100-ST)により検出され,PCベース計測器(横河電機㈱製:WE7000)を介してパソコンに取りこまれる. の重量は約7.7 kgであり,試験機本体部分はステンレス鋼SUS304製である.試験機の左右のアームに備えられている重錘およびバランスウェイトは真鍮製である.重錘はM5,圧子はM4のボルトで試験機に固定されている.圧子としてφ2mmの超硬ピンゲージ(新潟精機製 MTAA-2-0.001-12)がSK3製接続治具に圧入され,接続治具図1 引張試験模式図. − 135 −ハーバート硬さ試験機を用いた減衰硬さによる 加工硬化特性の予測
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