4.結び謝 辞 Fig. 8 –過時効Cu-(2.7~4.3) at.% Ti合金を加工率ε = 4.6 (d = 0.3 mmψ),ε = 6.8 (d = 0.1 mmψ)まで伸線加工した線材の引張強さ(a)および導電率(b).溶体化Cu-(2.7~4.3) at.% Ti合金の導電率も付記する.ロットされるデータはFig. 8で示される加工度ε = 4.6(d = 0.3 mmψ)および6.8(d = 0.1 mmψ)で伸線加工した線材の値を用いている.Fig. 9では従来のピーク時効-伸線加工プロセスで作製されたCu-Ti合金線材よりも過時効-伸線加工で作製した線材の方が強度-導電性バランスに優れることが確認される.また,Ti組成が高い線材ほどFig. 9では右上の位置にプロットされ,強度-導電性バランスが改善されることが明示される.過時効-伸線加工で作製したCu-Ti合金線材群は,強度-導電性バランスでは実用銅合金中で最高レベルにあるといえる.本研究より,合金のTi組成を制御すれば比較的広い範囲で強度-導電性バランスを制御できることも示唆される.Cu-Ti二元系状態図ではCuに対するTiの最大固溶度は5 at.%である.例えば,最大固溶限付近の組成を持つ合金線材を過時効-伸線加工プロセスに供すれば,Fig. 8より引張強さ1500 MPa-導電率27% IACSをもつ線材(加工度ε = 4.6),あるいは引張強さ1900 MPa-導電率17% IACSを示す線材(加工度ε = 6.8)の実現が予想される.今後,合金組成だけでなく加工・時効工程を精査すれば,更に高性能な合金線材が実現する可能性は高い.Fig. 9 –本研究より開発したCu-(2.7 to 4.3) at.% Ti合金線材および各種汎用銅合金線材の引張強さ‐導電率マップ14).過時効-伸線加工プロセスにより種々の組成のCu-Ti合金線材を試作し,合金組成が強度,導電性および組織変化に与える影響を調べた.Ti組成が大きい合金ほど過時効により得られるフルラメラ組織中の板状β-Cu4Tiの体積分率が大きくなる.これを伸線加工すると,Ti組成が大きいほど線材中にナノファイバー状のβ-Cu4Tiが高密度に分散するため,強度が向上する.導電率はTi組成が大きいほど低下するが,従来材(ピーク時効-伸線加工線材)と比較して高い値を示す.その結果,過時効-伸線加工プロセスでは,従来材より強度,導電性が両方とも改善された線材群が作製できることが実証された.本研究成果で特筆すべきは,高強度‐高導電性Cu-Ti合金線材を作製するのには,従来の熱処理条件を変更するだけであり特殊な設備が不要であることである.現在では,民間企業の協力のもと数km~数10 kmの長尺の線材サンプル品が作成可能であることを確認した.用途開発の見込みが立ちさえすれば,すぐに実用化される可能性は高い.今後は,過時効-伸線加工プロセスをCu-Ti合金だけでなく,Cu-Ni-Sn合金やCu-In合金に適用し,その汎用性を検証中である.Cu-Ti合金やCu-In合金では細線材だけでなく,太線材やリボン線,平角線材などの試作も試みている段階である.今後の展開にも注目してほしい.伸線加工はトクセン工業(株)のご尽力を賜った.実験の一部は東北大学金属材料研究所新素材共同研究開発センターの設備を利用した.本研究の遂行に当たっては東北大学金属材料研究所青柳英二氏,石黒三岐雄氏,門井祐輔氏,大阪府立大学岩瀬彰宏教授,天野晋太郎氏,手嶋理裕氏,Korea Institute of Materials Science Prof. Han,Dr. E.A. Choiのご協力を賜った.本研究は公益財団法人天田財団一般研究開発助成(AF-2017007)によって遂行された.− 116 −
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