3.3 強度,導電性に及ぼす合金組成の影響 きる.分散は,分散強化効果だけでなく,伸線加工時での転位の増殖やサブグレインの微細化に寄与するため継続的な加工硬化も引き起こす.その結果,強伸線加工条件に至っても加工硬化の効果は飽和することなく導入され,ピーク時効材を越える強度を得る.ここで,σm,σpは銅母相および析出物相(β-Cu4Ti)の導電率,Vfm,Vfpは銅母相および析出物相の体積分率である.銅母相の導電率σmは伸線加工前では固溶Ti量が0.37 at.% TiであるのでNordheimの式より30% IACS程度であると概算できる2).伸線加工によりβ-Cu4Tiの一部が再溶解するが,加工度ε = 6.8(d = 0.1 mmψ)まで伸線加工したときでも固溶Ti量が0.6 at.% Ti 程度であり,その時の導電率は23% IACS と算出される2).これに対して,β-Cu4Tiの導電率σpは4.4% IACSと報告され13),σmよりも極めて小さい.それゆえ,Ti組成の増加にともない導電性の低いβ-Cu4Tiの体積分率が増加するため,合金線材の導電率σは低下する.Fig. 7 加工度ε = 6.8 (d = 0.1 mmψ)まで伸線加工したCu-4.3 at.% Ti合金線材でのループ曲げ試験後の外観(a),ループ曲げ部(b). σ = Vfm σm + Vfp σp… (1) Fig. 5 過時効Cu-(2.7~4.3) at.% Ti合金の伸線加工にともなうビッカース硬さ(a)および導電率(b)の変化.ピーク時効‐伸線加工したCu-3.6 at.% Ti合金線材のデータも付記する19).Fig. 6 過時効Cu-(2.7, 3.5, 4.3) at.% Ti合金を加工率ε = 6.8 (d = 0.1mmψ)まで伸線加工した線材の引張公称応力‐公称ひずみ線図.の公称応力-歪み線図を示す.いずれの合金線材も典型的な弾塑性変形を示した後,局部変形することなく破断に至る.破断伸びはいずれも2%程度である.Fig. 7に加工度ε = 6.8 (d= 0.1 mm)まで伸線加工したCu-4.3 at.% Ti合金線材でのループ曲げ試験後の外観写真を示す.ループ曲げ部ではマイクロクラックなどはみられない.伸線加工材でも比較的良好な変形能があることが示唆される.Fig. 8には,加工度ε = 4.6(d = 0.3 mmψ)および6.8(d = 0.1 mmψ)まで伸線加工した線材の引張強度と導電性の合金組成依存性を示す.Fig. 8では,合金のTi組成が増加すると引張強度は単調に増加し,導電率は低下することが確認でCu-Ti合金棒材の組成が伸線加工材の強度に及ぼす影響について議論したい.Cu-Ti合金棒材のTi組成が増加すると,Fig. 2に示すように合金中の板状β-Cu4Tiの体積分率が増加する.β-Cu4Tiの体積分率の増加は,板状β-Cu4Tiの肥大化よりはラメラ積層間隔の狭小化をもたらすことが観察される(Fig. 1).Cu-Ti合金棒材を伸線加工するとラメラ組織中の板状β-Cu4Tiはナノファイバーへと形態が変化する.このときβ-Cu4Tiの体積分率が大きく,ラメラ積層間隔が小さいほど,ナノファイバーは高密度に分散する.ナノファイバーの高密度Ti組成の増加にともなう線材の導電率の低下は,銅母相の体積分率の減少で説明できる.板状あるいはナノファイバー状β-Cu4Tiが伸線方向に平行に配列していると仮定すると,合金線材の導電率σは下記のように記述できる.Fig. 9に本研究で作製した線材および各種実用銅合金線材の引張強さ-導電性の関係をまとめる.ここで,Fig. 9にプ− 115 −
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