助成研究成果報告書Vol31
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図7 種々の粒子を投射材に用いた斜投射FPPにより形成された微細周期構造の − 218 −重畳して,いわば階層的なテクスチャが形成されている.これに対し,ガラスビーズの投射によって形成されたうねの表面は,うろこ状の塑性変形痕が認められるものの,その表面は滑らかな様相を呈している.図6に示したとおり,ガラスビーズの表面は極めて滑沢となっていて,これがうねの表面へ転写されたものと考察される. このように,斜投射FPPのノズル構造,あるいは投射条件を適切に選定することで,微細周期構造の寸法をある範囲で任意に制御できる見通しが得られた.とくに,投射材の選定に応じて,うねの寸法のみならず,うねの表面性状も変化させることが可能である.また,うねの生成はある特定の材料においてのみ生じるわけではなく各種の金属材料に生じることを明らかにした. 3.2うね状微細周期構造面の濡れ性とその影響因子 まず,前項図5に示した各表面に対し,接触角の測定を行った結果を図8に示す.多くの条件で接触角は90°以上となり,疎水性を示した.また,うねの高さの増加に伴って,接触角は大きくなった.一方,図9は図7に示した各表面において測定された接触角を整理したものであり,破線で研磨面での接触角も示してある.同図より,接触角とうね寸法との間の明瞭な相関性が認められず,むしろ用いた粒子の種類によって接触角が異なるということが見出された.すなわち,鋼粒子およびホワイトアルミナ粒子を投射した場合には,研磨面よりもやや高い接触角を示しているのに対し,ガラスビーズ投射面のそれは研磨面と近い値であった.鋼粒子投射面,ホワイトアルミナ投射面に光学顕微鏡観察結果(OM)および走査型電子顕微鏡観察結果(SEM) 関しては,接触角は90°をわずかに下回ってはいるものの,研磨面と比べると疎水性が強くなっていると判断できる.前述の図8の結果と比べると接触角の絶対値は小さいものの,変化の傾向は矛盾していないと判断した. 鋼粒子投射面およびホワイトアルミナ粒子投射面において,研磨面と比べて接触角が増大した要因について考察を加える.まず,同等の寸法のうねを形成したガラスビーズ投射面では接触角の変化が認められなかったことを考慮すると,微細周期構造を形成したことが主たる要因であるとは断言しにくい.むしろ,図7で述べたように,うね構造の表面に微細な凹凸が重畳した,階層的なテクスチャ構造が影響を及ぼしていた可能性があるものと考えられる.粗面における濡れ性を記述するモデルとして,Cassie-Baxter理論が知られている.このモデルは,液滴が粗面の凹部に完全に侵入しない場合には,見かけ上,固体と空気層の複合材料として振る舞って接触角が定まると要約できる.濡れの挙動がCassie-Baxterモデル2)に従っていた,すなわち,極めて微細な凹部が,液滴接置面に空気層を介在させたと考えれば,わずかな接触角の増加がみられたという結果を合理的に理解できるものと考えられる. 以上のように,得られた結果からは,微細周期構造よりも,その表面に存在するさらに微細な凹凸構造の方が,接触角に大きな影響を及ぼしている可能性が示唆された.一方で図8に示した結果のように,接触角が微細周期構造の寸法に依存する可能性も見いだせている.微細周期構造の形状や寸法をより最適に制御すること,あるいは構造形成面に疎水性(親水性)の物質を被覆するなどの工夫を加え

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