4.結論 CaO-Al2O3-SiO2ガラスに対してCW-LBI法を適用しSUS − 268 −謝 辞 SUS球の運動とガラス内部の組成変動の関係を調査するために,SUS球の運動解析を行った試料を用いて,その移動方向に対して平行に切断・研磨し,光学顕微鏡観察およびEPMAによる組成分析を行った.図7(a)は作製した断面の透過光学顕微鏡写真である.SUS球移動時のレーザー照射パワー密度は62kW/cm2,SUS球の直径は約42µmであった.SUS球が170µm移動するまではその軌跡を視認できないが,170µm以上の位置では黒色の軌跡が確認できる.黒色の変質部が確認できない領域での移動速度は250µm/sec以上と速く,SUS球は慣性抵抗を受ける運動を示した.SUS球の運動のメカニズムに応じて形成される変質部の光学物性が変化していると推測される.図7(a)で示した慣性抵抗領域および粘性抵抗領域における組成分布を測定した結果を図7(b)および(c)にそれぞれ示す.SUS球が慣性抵抗を受けながら移動した領域では,母ガラスの組成にはほとんど変化がなく,SUS球の主成分であるFeが軌跡の中心部分において増加している.一方,粘性抵抗領域では軌跡の中心におけるSiO2濃度が母組成に比べて約6 mol%増加し,逆にCaO濃度が約6mol%減少した.Al2O3の濃度には変化がなかった.FeOの濃度は軌跡の外周部で増加した.SUS球の移動速度が速い慣性抵抗領域では,ガラス組成に変化はなく球の成分であるFeが微量ながらガラスマトリックス中に溶け出して軌跡の中心部に残存した.一方,SUS球の移動速度が遅い粘性抵抗領域では,母ガラスに含まれる成分の組成分布が変化した.このような組成変動はCWレーザーによる局所的な加熱に起因するものと考えられ,Soret効果のように温度勾配のある場において熱拡散が生じて,低温側にCaとFeが移動し高温側にSiが移動したものと考えられる. CW-LBI法における金属球の移動により局所的な組成コントラストが形成されたという事実は,微細な組成変動をガラス内部に作り込むことが可能であることを示唆している.本研究で得られた知見を基に,ガラス組成,金属の種類,レーザー照射条件を検討していくことでガラスの内部改質による機能性材料の開発へとつながるものと期待してる. 球の運動解析およびガラスの局所的な内部改質を行った.CASガラス内部でのSUS球の運動は,等加速度で加速して最高速度に到達した後,慣性抵抗続いて粘性抵抗を受けながら減速した.慣性抵抗を受けた軌跡では,微量のFeが残存し母ガラス組成に変化はなかった.粘性抵抗を受けた領域では,軌跡の中心でSiO2濃度が増加しCaO濃度が減少し,最大で6mol%の組成変化が誘起されることを明らかにした.CW-LBI法により微細な組成変動をガラス内部に形成することが可能であることを明らかにした. 本研究は,公益財団法人天田財団平成26年度奨励研究助成(AF-2014225)により行われたものであり,千葉大学大学院工学研究科人工システム科学専攻准教授の比田井洋史先生,学生の岩元健樹氏,ならびに東京工業大学物質理工学院・材料系教授の矢野哲司先生,学生の古閑哲人氏に多大なご協力をいただいた.ここに深く感謝の意を表します.また,EPMA分析のための試料作製および測定において,東京工業大学技術部分析支援センターの幸喜順氏と多田大氏に適切な助言をいただいたことに心より御礼申し上げます.
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